遺産分割調停の期日を欠席したい人が知っておくべきデメリットと対処法

相続人が複数名の場合,家庭裁判所にて「遺産分割調停」を行います。
遺産分割調停を申し立てられたものの,出頭は煩わしいし,あれこれ突っ込まれそうで怖いといった理由で,いっそのこと期日を欠席したいと考えられる方もいるようです。
遺産分割調停の期日を欠席すると,どうなってしまい,どのようなデメリットがあるのでしょうか?
本記事では,遺産分割調停の期日を欠席したい人が知っておくべきデメリットと,その対処法についてご説明します。
遺産分割調停を欠席したときの流れ
こちらでは,遺産分割調停を欠席した時の流れについてご説明します。
調停は成立しない
遺産分割調停が成立するためには,相続人全員が合意する必要があります。
なので,相続人が遺産分割調停の期日を欠席した場合,他の相続人が全員合意していても,その期日に調停は成立しません。
審判に移行する
とはいえ,1回欠席したくらいでは,通常,調停不成立にはなりません。
ただ,裁判所が1,2期日出席を促しても,なお出席がない場合は,調停が取り下げられない限り,調停は不成立とされ,自動的に審判に移行します。
裁判所は,なおも出席を促しますが,それでも欠席の場合,他の相続人の話や資料を調査したうえで,審判を下します。
その内容が,自分に有利であれば問題ないですが,不利な場合もあります。
審判に不服がある場合,即時抗告ができますが,審判書の送達から2週間以内に即時抗告しない場合,審判が確定してしまいます。
欠席した場合のデメリット
こちらでは,「遺産分割調停を欠席したときの流れ」で少し触れた,欠席した場合のデメリットの詳細を下記にまとめます。
自分に不利な審判が下されるおそれがある
期日を欠席した場合,それだけで不利になるわけではなく,裁判所が必要な調査を行います。
ただ,裁判所が調査したとしても,欠席した方に有利な事情に気づかないことも多く,結果として,欠席した方に不利な審判が下される可能性があります。
杓子定規な審判が下されるおそれがある
審判は,調停に比べ,融通が利かないため,杓子定規な判断がなされるおそれがあります。
遺産分割調停の期日を欠席したいときの対処法
では,仕事や家庭の事情により,どうしても欠席せざるを得ないときは,どうすればよいのでしょうか。
遺産にこだわりがない場合は相続分の放棄・譲渡をする
まず,遺産が少額,相続分がわずかなどの理由で,とくに遺産を分けてほしくない場合は,自身の相続分を放棄又は譲渡し,それを裁判所に届け出ると,遺産分割調停の手続きから排除してもらえます。
具体的な方法は,遺産分割調停がかかっている裁判所に問い合わせることをおすすめします。
期日変更を申し立てる
遺産を分けてほしいけれど,所定の期日に出席が困難な場合は,家庭裁判所に,期日の変更を申し立てましょう。
ただ,他の相続人が日程調整し出席しようとしている可能性がありますので,期日変更は簡単には認められません。
実際は,当初の期日を維持し,欠席希望の方は,その期日は欠席してもらい,次の期日から出席してもらう,という運用がなされています。
電話会議システムを利用する
期日の時間はとれるが,遠方の家庭裁判所に出向く手間暇がかかる場合は,電話会議(家事事件手続法54条,258条1項)の利用を申し出るのも手です。
ただ,電話会議は,本人確認が困難等の理由により,弁護士事務所以外からの利用が認められにくいというのが実情です。
弁護士に依頼する
出席が煩わしい,自分で調停に対応するのは自信がないという場合は,弁護士に調停手続きの代理を依頼し,自分の代わりに出席してもらうとよいでしょう。
弁護士に依頼すれば,弁護士事務所から電話会議により調停に出席することも認められやすいといえます。
おわりに
本記事では,遺産分割調停の期日を欠席したい人が知っておくべきデメリットと,その対処法についてご説明しました。
遺産分割調停の期日を欠席したい場合,いくつかの対処法があります。
ただ,遺産分割調停は,使途不明金,特別受益,分割方法など,難しい問題を有しています。
そのため,弁護士費用の負担が可能であれば,弁護士に依頼し,対応してもらうのが,欠席対策としても,ご自身の権利を守るためにも,最も確実といえます。