住んでいる家の相続はどうすればいい?遺産相続の方法や注意点をわかりやすく解説

住んでいる家の相続はどうすればいい?遺産相続の方法や注意点をわかりやすく解説

「親からタダで借りた家に住んでいるけど、親が死んだ後も住み続けることはできるのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは親からタダで借りた家に親の死後も住み続ける方法について解説します。

方法①~遺言書をのこす

住んでいる家の相続はどうすればいい?遺産相続の方法や注意点をわかりやすく解説2ある人(被相続人)が死亡し、遺産がのこされたとき、遺言があるときは遺言の記載に従って遺産分割をすればよいのですが、遺言がないときは相続人全員で話し合って遺産分割をすることになります(相続人同士の話し合いではまとらないときは、家庭裁判所の遺産分割調停や審判によって解決することになります)。

法定相続人は、①配偶者相続人と②血族相続人の二種類に区別することができます。

このうち、配偶者相続人は1人だけであり、常に最も先順位の血族相続人と同順位の相続人となります(民法890条)。

これに対し、血族相続人には優先順位があり、先順位の血族相続人が誰もいないときに初めて次順位の血族相続人が相続人となります(民法889条)。

血族相続人の優先順位は、第1位が子とその代襲相続人(民法887条)、第2位が直系尊属、第3位が兄弟姉妹とその代襲相続人になります(民法889条)。

ここで重要なポイントは、民法は相続分についても法定しているおり、同順位の血族相続人の相続分は同じ割合であるということです。

つまり、自宅の時価が自分の法定相続分の範囲内であれば自宅をそのまま相続すればよいのですが、自宅の時価が自分の法定相続分の範囲を超えるときは、超える分のお金を他の相続人に差し出さなければなりません(これを「代償分割」と呼びます)。

遺産分割は、相続人同士の協議が整わなければ、遺産分割調停を経て、最終的には遺産分割審判に移行し、裁判官が審判を言い渡して決着することになります。

裁判所は、被相続人の生前から自宅として使用している相続人がいるときは、自宅の時価がその相続人の相続分の範囲内であるときは自宅をその相続人に取得させるでしょうし、その相続人が「超過分はお金を払って解決したい」と希望しているのであれば、その希望に配慮して代償分割を命じてくれるでしょう。

問題は、自宅の時価がその相続人の法定相続分の範囲を超えており、しかもその相続人が超過分のお金を出すことができないときです。

裁判所が審判をするときは、現物分割→代償分割→換価分割→共有分割の順番で、どの財産をどの相続人が取得するのかを判断することになります。

自宅として利用されている土地建物ですから、通常は分割することができないと思われますので、居住者にお金がなく代償分割が選択できない以上、換価分割(売却し、売却代金を相続人全員で分けるもの)を命じることになります。

このような事態を避ける簡単な方法があります。

それは、被相続人に頼んで、当該自宅の土地建物は当該自宅を借りている相続人に相続させる旨の遺言を作成してもらうことです。

なぜなら、遺言があれば、法定相続分の範囲を超えた遺産についても相続することができるからです。

ただし、他の相続人の遺留分を侵害するときは、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける場合があります。

その場合には、侵害した遺留分に相当するお金を支払わなければなりません。

とはいえ、遺留分は法定相続分の2分の1にすぎませんし(相続人が被相続人の直系尊属でないとき)、遺留分侵害額請求権は相続の開始及び遺留分を侵害する遺言があったことを知った時から1年が経過すると時効によって消滅しますので(民法1048条)、遺言を作成しておくメリットは極めて大きいと言えます。

方法②~契約書を作成する

住んでいる家の相続はどうすればいい?遺産相続の方法や注意点をわかりやすく解説3タダで借りるのではなく、相応の賃料を支払って借りれば、使用貸借ではなく賃貸借になります。

賃貸借に該当すれば借地借家法による手厚い保護を受けることができますので、相応の賃料を支払うという負担はずっと残るものの、賃料を支払い続ける限り親の死後も自宅に住み続けることができます。

また、どうしてもタダで借りたいのであれば、使用貸借契約書を作成し、いつまでタダで住み続けることができるか(使用貸借契約の終了時期)について契約書に明記しておくべきです。

この点、使用貸借契約の終了時期について、「借主の死亡に至るまで」(大審院昭和9年11月30日判決)とか「借主の長男が成年に達するまで」(大審院昭和11年6月5日判決)というような記載であっても、判例は返還時期の定めとして有効であると判断していますが、借主や借主の長男が不慮の事故で死亡した場合に困りますので、20年とか30年といった紛れる余地のない期間にしたほうがよいと思われます(使用貸借契約は借主の死亡によって終了するものとされていますので、「契約期間中に借主が死亡したとしても、借主の妻が生存している間は終了しない」というような文言を入れておくべきです)。

そして、被相続人と締結した使用貸借契約の貸す債務は、被相続人の死亡後はその相続人が相続することになりますので、被相続人からタダで借りた相続人は、被相続人の死後もタダで借り続けることができます。

タダで借りた相続人は、自身の使用借権を第三者に対抗する(権利を主張する)ことはできないとはいえ、他の相続人には主張することはできますし、他人が占有している土地建物は換価しにくいことから、その土地建物を事実上占有することができます。

その結果、当該土地建物は、使用借権相当額だけ減価したといえますので、その減価額がタダで借りた相続人の特別受益として扱われることになります。減価額の金銭評価は非常に難しいのですが、通常は更地価格の1~3割の範囲内で決定されているようです。

配偶者居住権

被相続人の配偶者が被相続人の死亡時に被相続人名義の建物に居住しているときは、配偶者居住権を取得できる場合があります(民法1028条1項、民法1029条)。

配偶者居住権を取得した配偶者は、その建物の全部を無償で使用収益することができますし(民法1028条1項)、配偶者居住権を登記して第三者に対抗することもできるようになります(民法1031条)。

まとめ

このように、被相続人からタダで借りている家に被相続人の死後も住み続けるためには、被相続人に頼んで遺言や使用貸借契約書を作成しておくべきです。

相続や遺言についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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