代襲相続とは?対象者や相続のポイントをわかりやすく解説

代襲相続とは?対象や相続のポイント

最終更新日 2025年4月22日

相続が発生した際、相続人になるのは被相続人の配偶者や兄弟、子どもなどです。

相続人となる人が亡くなっていると、被相続人の孫や甥、姪などが相続人となる場合があります。

このような相続を代襲相続といい、遠方に住んでいたり、日頃からお付き合いがなかったりする方が相続人となることで、手続が煩雑になるケースも多いです。

この記事では、代襲相続が起こる要因や相続を行う際に押さえておきたいポイントなどを紹介します。

代襲相続とは

代襲相続とは代襲相続とは、被相続人(亡くなった人)の子どもや兄弟姉妹など本来相続人となる人がいない場合に、世代を飛び越えて相続が発生することです。

相続は、以下のように民法によって法定相続人になる人の範囲や順位が定められています。

  • 被相続人の配偶者:常に相続人
  • 第1順位:子ども、子がいない場合は孫、孫がいない場合はひ孫
  • 第2順位:父母、父母がいない場合は祖父母
  • 第3順位:兄弟姉妹、兄弟姉妹がいない場合は甥、姪

このうち、代襲相続人に該当するのは第1順位の孫や第3順位の甥、姪です。

近年は高齢化が進んでおり、親より先に子どもが亡くなるケースも多くあります。

このような場合に代襲相続が発生し、すでに他界している方の子どもが代襲相続人になって財産を相続します。

代襲相続が発生する原因

代襲相続が発生する原因代襲相続はどのような場合に発生するのでしょうか。

ここでは、代襲相続が発生する3つの原因をそれぞれ解説します。

相続開始以前に相続人が亡くなっている

代襲相続は、被相続人が亡くなるより前に本来の相続人が亡くなっている場合に発生します。

たとえば、被相続人の子どもが被相続人よりも先に亡くなっていた場合、その子の子(孫)が代襲相続人となります。

また、被相続人とその子どもが同一の事故によって亡くなった場合も、代襲相続が発生する可能性があります。

相続人が相続欠格に該当している

相続人が相続欠格に該当していると、法的に相続人が相続を受けられなくなるため、代襲相続が発生します。

相続欠格とは、相続人が利益を得るために違法または不正な行為を行った場合に、相続の資格を失う制度です。

具体的には、以下のような行為を行うと相続欠格になります。

  • 故意に被相続人や自分以外の相続人を死亡させた者
  • 被相続人が殺害されたことを知りながら告訴や告発しなかった者
  • 詐欺や脅迫により、被相続人が相続に関する遺言を作成、撤回、帳消し、変更することを妨げた者
  • 詐欺や脅迫により、被相続人が相続に関する遺言を作成、撤回、帳消し、変更させた者
  • 相続に関する被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠ぺいした者

相続人がこれらの行為を一つでも行うと、相続欠格に該当することとなり、相続人が相続を受けることができず代襲相続が発生します。

相続人が相続廃除を受けた場合

本来の相続人が被相続人から相続廃除を受けた場合、相続を受けることができなくなり、代襲相続が発生します。

相続廃除とは相続権を持っている人を相続から外せる制度のことで、一般的には被相続人が「この人物だけには財産を渡したくない」という場合に行います。

相続廃除の対象となるのは、遺留分を有する推定相続人のみで、手続ができるのは被相続人のみです。

たとえば、以下のような場合に相続廃除が認められる可能性があります。

  • 被相続人が推定相続人から虐待や侮辱を受けた
  • 推定相続人が多額の借金をし、その返済を被相続人にさせた
  • 推定相続人が重大な犯罪を犯した

相続廃除には、被相続人が存命中に行う生前廃除と、亡くなった後に行う遺言廃除の2種類があります。

いずれの場合も、相続廃除を受けると本来の相続人が相続できなくなるため、代襲相続が発生する場合があります。

代襲相続人の範囲やケース

代襲相続人の範囲代襲相続人の範囲やケースは被相続人との関係によっても変わってきます。

ここでは、代襲相続人の範囲やケースを解説します。

代襲相続人が実子の子の孫の場合

被相続人の直系卑属は、制限なく何代でも続けて代襲相続が行われます。直系卑属とは、子ども、孫、曾孫など、直系の血縁関係にある親族のことです。

たとえば、被相続人の子どもが亡くなり、その子どもに子ども(被相続人の孫)がいた場合は、孫が代襲相続人になります。

また、被相続人が亡くなったときに、子どもも孫も亡くなっている場合は、曾孫が代襲相続人になるというわけです。

直系卑属は、孫がいなければ曾孫、曾孫がいなければ玄孫のように、代襲相続が続いていきます。

ちなみに、曾孫のように代襲相続が2段階で発生する形態のことを再代襲相続といいます。

代襲相続人が養子の子の孫の場合

養子縁組をした後に生まれた養子の子どもは、代襲相続人になることができます。

これは、特別養子縁組でも普通養子縁組でも、養子縁組が成立した日から養子は養親の直系卑属になるためです。

民法において遺産相続では養子と実子に身分上の違いはなく、通常の代襲相続と同じ扱いになります。

一方、養子縁組をする前に生まれた養子の子どもは、養親の代襲相続人にはなれません。

代襲相続人が甥や姪の場合

被相続人に子どもや両親、兄弟姉妹がいない場合は、甥や姪が代襲相続人になります。

なお、甥や姪は血縁関係があるものの親子関係ではない傍系卑属にあたります。

そのため、直系卑属と違って代襲相続ができるのは甥と姪までで、その子どもが代襲相続を受けることはできません。

また、甥や姪が代襲相続した場合は、相続税が2割加算されるなど一定の制限もあります。

代襲相続で押さえておきたいポイント

代襲相続のポイント代襲相続にはさまざまなルールや注意点があるため、慌てないためにもポイントを押さえておきましょう。

ここでは、代襲相続で押さえておきたい具体的なポイントを解説します。

代襲相続の法定相続の割合

代襲相続の法定相続の割合は、「被代襲者の相続割合÷代襲相続人の人数」で計算を行います。

相続割合とは民法で定められている相続できる遺産の分割割合のことで、相続税額の計算を行う際にも必要です。

たとえば、被相続人に配偶者と「子どもA」「子どもB」の2人の子どもがいると仮定します。

この場合、財産は配偶者が2分の1を相続し、残った2分の1を子どもAと子どもBで分割することになるため、子どもは4分の1ずつ相続することになります。

このうち、子どもAがすでに亡くなっており、子どもAに1人の子ども(被相続人の孫)がいる場合、代襲相続によって孫はそのまま4分の1の財産を引き継ぐことが可能です。

代襲相続になったからといって相続分が減るわけではなく、引き継いだ相続分を分けることになります。

相続放棄があると代襲相続が発生しない

法定相続人が相続放棄をしている場合、その後の世代に代襲相続は発生しません。

これは相続放棄をした人は最初から相続人でなかったとみなされ、相続権自体が発生しないためです。

具体的には、被相続人が亡くなって相続が発生した場合に、被相続人の子どもであるAが相続放棄をしていたら、被相続人の孫(Aの子ども)に代襲相続は発生しません。

相続放棄は被相続人に多額の借金がある場合や、相続争いに巻き込まれないために行う場合があります。

なお、相続放棄をした場合は、基本的に相続権は次順位の相続人に移ります。

相続人が増える可能性がある

代襲相続が起こった場合、相続人が増える可能性があります。

なぜなら、本来の相続人に複数の子どもがいる場合、その子どもたちすべてが代襲相続人となるためです。

たとえば、被相続人の子が亡くなっていて、その子に3人の子(被相続人の孫)がいる場合、この3人が代襲相続人になります。

通常は1人の相続人が代襲相続人の複数人に置き換わるため、代襲相続が発生すると相続人が増えるというわけです。

ちなみに相続人が増えると相続税の基礎控除が増えるメリットがある一方、遺産分割協議に手間や時間がかかるデメリットがあります。

代襲相続の手続について

代襲相続は、通常の相続よりも必要な書類が増えるため、手続が煩雑になる可能性があります。

通常の相続登記と手続の内容は同じであるため、1回で相続登記は済みます。

ただし、本来の相続人となる人がすでに亡くなっていることや、代襲相続人が本来の相続人であることを確認するための戸籍謄本が必要です。

通常の相続登記でも必要となる書類ですが、代襲相続の場合は本来の相続人との関係を示すための戸籍謄本も必要となります。

トラブルが発生する場合がある

代襲相続は、通常の相続に比べてトラブルが発生しやすいため注意が必要です。

これは被相続人の子の間で相続するというケースと異なり、被相続人の子どもや孫世代など、異なる世代の間で相続財産を分割するためです。

具体的には以下のようなトラブルが発生することもあります。

  • 相続人が代襲相続人と話し合うことなく手続を進める
  • 相続人が代襲相続人に対して相続財産を開示しないまま財産放棄を求めてくる
  • 代襲相続人が遺産分割に協力せずに手続が進まない
  • 被相続人が借金を抱えていて借金の押し付け合いが起こる

このようなトラブルを防ぐためにも、相続財産の全体を正しく理解し、必要な手続を進めていくことが大切です。

また、代襲相続のトラブルは複雑になりやすく、自分で対応や解決することは難しい場合もあります。

特に法律が絡んでくるトラブルは解決の難易度が高くなるため、法律の専門家である弁護士に相談・対応してもらうことも方法の一つです。

数次相続と代襲相続の違い

代襲相続は相続開始前に本来の相続人が死亡して発生するのに対し、数次相続は相続手続中に本来の相続人が死亡して次の相続が発生するという違いがあります。

数次相続とは、被相続人の遺産相続が開始した後に、遺産分割協議が終わらないうちに相続人の一人が亡くなって次の遺産相続が発生することです。

最初に発生した相続を一次相続、次に発生した相続を二次相続といい、一次相続の相続人が亡くなった場合は二次相続の相続人が財産を引き継ぎます。

数次相続と代襲相続は混同されることもありますが、まったく異なる性質のものであるため注意しましょう。

数次相続も代襲相続と同様に相続が複雑化するため、トラブルが発生しやすい特徴があります。

代襲相続人と相続税の基礎控除について

代襲相続と相続税の基礎控除代襲相続が発生して相続人が増えると、相続税の基礎控除が大きくなって税金が安くなる場合があります。

そもそも相続税の基礎控除とは、被相続人から受け継いだ財産の総額から差し引くことができる控除のことです。

相続税の基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で求めます。

代襲相続人も法定相続人の数に含めて計算するため、代襲相続人が2人なら4,200万円、代襲相続人が3人なら4,800万円のように、1人増えるごとに600万円ずつ控除が増えます。

なお、亡くなった本来の相続人は基礎控除の計算における法定相続人の数には含まれません。

まとめ

この記事では、代襲相続の対象者や相続のポイントを解説しました。

代襲相続は、本来相続するはずだった人が相続開始前に亡くなったり、相続権を失ったりした場合に、その人の子どもなどに相続権が移ることです。新たに相続人になった人は代襲相続人となり、被相続人の財産を受け継ぐことができます。

なお、被相続人の直系卑属であれば代襲相続は何世代にもわたって発生するため、被相続人の孫や曾孫が代襲相続人になるケースもあります。

一方、代襲相続は世代を超えての遺産分割協議が行われることで、相続人同士のコミュニケーション不足で話が前に進まない場合やトラブルが発生するケースもあります。

代襲相続における遺産分割協議のトラブルを防止し、円滑に手続を進めていくためには弁護士に依頼するのがおすすめです。

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遺産相続やそれに伴う相続税や相続登記も、地元の税理士や司法書士と連携してワンストップの解決を図ります。

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最終更新日 2025年4月22日

弁護士紹介(監修者)
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学経済学部卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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