審判前の保全手続とは?遺産を勝手に処分されそうなときの対処法

審判前の保全手続

遺産相続の際に争いがあり相続人だけの話し合いではまとまらない場合には、家庭裁判所において調停を行うことになります。

調停とは、裁判所を利用した話し合いですが、相続人同士は顔を合わせることなく調停委員という仲裁役がそれぞれの意見、主張などを聞いて調整します。

そして、まとまると「調停調書」を作成します。

この調停調書は、訴訟における勝訴判決と同様の効力があり調停調書に従わない相続人がいれば強制執行をして調停調書の内容を実現させることができます。

調停ではまとまらない場合には、審判に移行して裁判官が遺産分割方法を決定します。

審判前の保全手続とは

調停や審判で遺産分割方法が決定するまでには時間がかかります。

他の相続人が占有している相続財産が勝手に処分されたりすれば、調停申し立て時に存した財産の審判が確定した時点では存在せず、審判の内容通りの遺産分割が実現できなくなってしまいます。

そこで、審判前に現状を保全するための手続きを規定しています。

(家事事件手続法第105条第1項)

審判前の保全手続の種類

審判前の保全手続き2保全手続を申し立てることによって具体的にどのようなことができるのでしょうか。

こちらでは、その種類をご紹介します。

財産管理人の選任

こちらは、被相続人の財産を相続人の誰かが所持している場合に勝手に売却などの処分をされないように、裁判所に財産を管理してもらう人を選任してもらい財産の流出を防止します。

仮差押・仮処分その他の保全手続を命ずる

預貯金の引き出しを禁止したり、不動産の処分を禁止したりするための手続きです。

審判前の保全手続申立ての時期

遺産分割審判前の保全手続は、家事審判事件が開始された以降に申し立てることができます。

また、審判より前段階の調停中においても審判前の保全手続の申し立ては可能です。

審判前の保全手続の手続や流れ

遺産分割調停または審判が行われている家庭裁判所に「審判前の保全手続申立書」を作成して提出します。

申し立てでは、保全すべき権利と保全の必要性を疎明しなければなりません。

疎明とは、裁判官が「これだけの事実関係があれば、おそらく確かだろう」と考える程度の立証のことをいいます。

いち早く保全するためにはじっくりと審査している余裕がないため「証明」よりも緩やかな立証で良いとされています。

次に、裁判官との面接期日が決められ、その期日では提出した疎明資料の追加で確認したい事柄や事実関係を尋ねられます。

これにより、保全の必要があると認められた場合には、申立人に対して保証金(担保)を提供するよう指示します。

この担保は、スピーディーに保全手続きを行うため、じっくり慎重に審査していられないことから、この処分命令における相手方への損害に備えるために要求されます。

担保の金額は裁判官が事案の内容を勘案して決定し、担保がゼロの場合もあります。

期限までに担保を提供すると、保全命令が発せられて相手方に通知されます。

相続では仮差押・仮処分が重要

審判前の保全手続3遺産分割調停や審判では、分割方法が確定するまでに時間がかかる場合が多く、せっかく時間をかけたのに実際には実現しなかったということがないようスピーディーに仮差押・仮処分を行うことが重要です。

おわりに

今回は、遺産分割調停・審判の期間中に相続財産の隠匿、処分などがされないための保全手続きについてご説明しました。

審判前の保全手続は家庭裁判所に「審判前の保全手続申立書」を作成して提出します。

遺産の差押や処分が行われると相続ができなくなるため、早めに上記書類を作成・提出する必要があります。

保全手続の申し立ては、専門知識が必要で、かつ速やかに行う必要があるため弁護士に相談しながら進めるのがよいでしょう。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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