遺言の効力は争われやすい
- 知らぬ間に親兄弟の妾や後妻に遺産相続させる遺言が作られていた
- 死ぬ間際にそんな遺言を作るはずがないので,遺言の無効を主張したい
- きちんと遺言を作ってもらっていたのに,遺言の無効を主張された
このようなご相談を時折お受けします。
こうした案件がもめやすいのは,妻子は,妾や後妻の人物像がわからず,妾や後妻に対し必ずしも良い感情を抱いていないことから,「妾や後妻が,本人の判断力が乏しいのに乗じて,自分に有利な遺言を作らせたのではないか?」との疑いを持ちやすいという事情があります。
また,そうした遺言が作られるのが,親兄弟の死ぬ間際であることが多いので,なおさらです。何よりも,遺言を作成した張本人がすでに死亡しているので,表現は良くないですが,「死人に口なし」の状況にあるということも災いするようです。
遺言能力
遺言が有効であるためには,遺言能力(=遺言の結果を弁識できる意思能力)が必要とされており,遺言能力を欠く遺言は無効とされます。
そこで,遺言能力の有無が当事者間で争われます。
公正証書遺言については,公証人や証人2名以上が立ち会うので,効力が争われることはないと思われがちですが,思いのほか遺言能力が争われる印象です。
遺言能力の有無については,結論が1か0ですので,当事者間の話し合いによる解決は困難であり,最終的には,審判や訴訟において裁判官が遺言当時のカルテなどの書証や公証人や証人の証言をもとに判断します。
言い換えれば,遺言無効に関する裁判では,書証や証言により遺言者の遺言当時の状況をどれだけ再現できるかが勝負のカギを握ります。
方式の不備
このほか,方式不備で遺言の効力が争われることもあります。