預貯金、現金、金銭債権は遺産分割の対象となるか?

預貯金、現金、金銭債権は遺産分割の対象となるか?2

最終更新日 2022年10月2日

「預貯金、現金、金銭債権は遺産分割の対象となるのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、預貯金、現金、金銭債権は遺産分割の対象となるのかどうかについて解説します。

最高裁判例

預貯金、現金、金銭債権が遺産分割の対象となるのかどうかについて、いずれも最高裁判所の判例があります。

預貯金(遺産分割の対象になる)

預貯金が遺産分割の対象になるかどうかについての最高裁判所の判例は、最高裁判所平成29年12月19日決定になります。

この決定は、普通預金については「預貯金債権が相続開始時の残高に基づいて当然に相続分に応じて分割され、その後口座に入金が行われるたびに、各共同相続人に分割されて帰属した既存の残高に、入金額を相続分に応じて分割した額を合算した預貯金債権が成立すると解することは、預貯金契約の当事者に煩雑な計算を強いるものであり、その合理的意思にも反するとすらいえよう。」と述べ、定期預金については「定期貯金債権が相続により分割されると解すると、それに応じた利子を含めた債権額の計算が必要になる事態を生じかねず、定期貯金に係る事務の定型化、簡素化を図るという趣旨に反する。他方、仮に同債権が相続により分割されると解したとしても、同債権には上記の制限がある以上、共同相続人は共同して全額の払戻しを求めざるを得ず、単独でこれを行使する余地はないのであるから、そのように解する意義は乏しい。」と述べ、結論として「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」との判断を示しました。

この決定は、預貯金は遺産分割の対象とはならない(各相続人が単独で払い戻しを請求することができる)としていた従来の裁判実務を覆すものであり、実務に重大な影響を与えるため、最高裁判所長官が裁判長を務める大法廷で審理され、そのような判断に至った詳細な理由が付されています。

現金(遺産分割の対象になる)

預貯金、現金、金銭債権は遺産分割の対象となるか?3現金が遺産分割の対象になるかどうかについての最高裁判所の判例は、最高裁判所平成4年4月10日判決になります。

この判決は、「相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできないと解するのが相当である。」との判断を示しました。

なぜ相当なのかについて、理由は全く示されていません。

現金が遺産分割の対象にならなければ、他の相続人は、現金を保管する相続人に対し、自己の相続分の限度で現金の引渡しを求めることができます。

上記の最高裁判例が現金の引渡しを認めなかったということは、「現金は遺産分割の対象となる」という判断を最高裁判所がしたことを意味することになります。

金銭債権(遺産分割の対象とはならない)

金銭債権が遺産分割の対象になるかどうかについての最高裁判所の判例は、最高裁判所昭和29年4月8日判決になります。

この判決は、「相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解するを相当とする」との判断を示しました。

なぜ相当なのかについて、理由は全く示されていません。

この最高裁判例によれば、金銭債権は相続開始と同時に「法律上当然分割され」るため、遺産分割の対象となる共有状態が存在しないことになります(遺産分割をしなければならないのは、被相続人の死亡によって、相続財産が相続人全員の共有状態になるからです。逆に言えば、相続財産の共有状態を解消する方法が遺産分割手続になります)。

とはいえ、この最高裁判例は、当然には遺産分割の対象にならないと述べているのであって、相続人全員が遺産分割の対象とすることに合意した場合についてまで遺産分割の対象としてはならないとの判断を示したものではありません。

したがって、家庭裁判所の実務では、相続人全員の合意があれば、金銭債権についても遺産分割調停や審判の対象にしています(なお、相続人の誰からも明確な異議がなければ、通常は黙示の合意があるものとして扱われます)。

まとめ

このように、預貯金と現金は当然に遺産分割の対象になります。

また、金銭債権についても、遺産分割調停を申し立てた相続人が遺産分割の対象にすることを希望し、相手方になった相続人から明確な異議がなければ、遺産分割の対象になります。

遺産分割についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。

最終更新日 2022年10月2日

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学経済学部卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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