内縁の妻や夫に相続権はない!対策は贈与と遺贈の活用

内縁の妻や夫に相続権はない! 対策は贈与と遺贈の活用

最終更新日 2024年6月30日

我が国の相続関係においては戸籍が重視されます。

では、いわゆる内縁関係の夫婦はどうでしょうか?

内縁とは事実婚とも呼び、実際に夫婦として生活しているものの婚姻届を提出していない夫婦のことをいいます。

婚姻届を出していなければ夫婦として戸籍に記載されることはありませんから、どちらかが亡くなっても他方に相続権はありません。

ところが、何十年も共に生活をしているとその間に築いた財産も出てきます。

内縁の配偶者に子供がいればその子供が内縁の配偶者名義の財産を相続することになりますし、子供がいない場合には親(祖父母)が、親(祖父母)がすでに亡くなっていれば兄弟姉妹が相続することになります。

相続財産は共に築いた財産であっても、名義が誰の名義かで判断されますから、内縁関係では自己の権利を主張する場面がありません。

そこで、ここからは内縁の配偶者に対して財産を残す方法についてみていくことにします。

内縁の配偶者に財産を残す方法

遺言

内縁の妻や夫に相続権はない! 対策は贈与と遺贈の活用2遺言は被相続人の最後の意志として尊重されますから、原則として遺言に記載したとおりに遺産の承継を行うことができます。

ですから、内縁の配偶者に対してすべての遺産を残すこともできます。

ただし、兄弟姉妹を除く相続人には遺留分といって最低限の財産額の承継が保証されています。

すなわち、すべての財産を内縁の配偶者に承継させる内容の遺言を残していても、後から最低限の保証額を返還するように請求されることがあります。

手続きとして遺留分は被相続人の生前に家庭裁判所の許可を得て放棄することができますが、一般的に放棄してもらうのは極めて難しいのではないでしょうか。

そこで、後から遺留分を請求されないようにするには、遺留分相当額の財産は相続人に残し、後はすべて内縁の配偶者に承継させる旨の内容にする方法もあります。

もう一点注意すべきポイントがあります。

この遺言で内縁の配偶者に財産を残す行為は遺贈といって、贈与にあたりますから贈与税がかかります。

法律婚のように税金面で特別な控除規定はありません。

生前贈与

生きている間に内縁の配偶者に自己の財産を贈与することが可能です。

この場合も贈与税がかかりますが、年間に110万円までであれば贈与税がかかりませんから、毎年少しずつ贈与していくことも一つの方法といえます。

生前贈与についての遺留分との関係としては、被相続人の死亡前の1年間にした贈与についても対象となります。

また、遺留分を侵害することを知ってなされた贈与は死亡の1年以上前であっても対象になります。

したがって、後で遺留分を請求されないようにするためには前述の遺言と同様に遺留分を持つ相続人には遺留分相当額の財産は残しておくのも一つの方法です。

特別縁故者とは

民法第958条の3に「特別縁故者に対する財産分与」という規定があります。

被相続人に相続人がいない場合で、遺言も残していない場合には一定の条件にあてはまる人が家庭裁判所に申し立てをして認められた場合には被相続人の財産の全部または一部が分与されるというものです。

一定の条件とは、

・生計を同じくしていた者

・被相続人の生前に療養看護に努めた者

・被相続人と特別の縁故を有した者

内縁の配偶者の場合にはこの条件にあてはまるケースは多いと思われます。

生命保険の活用

内縁の妻や夫に相続権はない! 対策は贈与と遺贈の活用3保険は契約の際に指定受取人を定めます。

保険の対象者が亡くなった場合、死亡保険金は直接に指定受取人の財産となります。

「直接に」とは、被相続人の財産が指定受取人に承継されるわけではなく、保険会社から直接に指定受取人に支払われるという意味です。

したがって、指定受取人を内縁の配偶者にしていれば死亡保険金は相続財産になりませんから、このお金に対して相続人から遺留分の請求をすることができません。

ですから、死亡保険金を内縁の配偶者にしておいて、遺留分を有する相続人には相続財産を残す、あるいは死亡保険金でうまくバランスをとるということも方法の一つです。

まとめ

今回は内縁関係にある夫婦の財産承継についてみてきました。

どうしても税金面においては控除規定がありませんから、納める税額は多くなります。

遺留分の対策としては説明したとおりですが、実際には遺留分に配慮した生前贈与や遺言をするのは計算も難しい面もありますし、亡くなるまでの期間に財産状況も変化するのでご自身で考えるのは難しいかもしれません。

そのような場合には弁護士に相談して、死後に残される配偶者が不利益を被らないような対策をされるのがよいと考えます。

最終更新日 2024年6月30日

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学経済学部卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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