相続人が未成年、認知症、行方不明の場合、遺産分割はどう進めたらよいのか?

相続人たち

「相続人の中に未成年者、認知症の人、行方不明の人がいるとき、どうしたらよいのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、相続人の中に未成年者、認知症の人、行方不明の人がいるときにどうしたらよいのについて解説します。

相続人の中に未成年者がいるとき

未成年者が有効な法律行為をするためには、法定代理人の同意が必要です(民法4条1項)。

遺産分割も法律行為のひとつですので、法定代理人が代理して行うか、法定代理人の同意を得て行う必要があります。

未成年者の法定代理人は、通常は親権者である父母ですが(民法818条1項)、遺産分割手続においては、父母自身の利益と子の利益、あるいは複数の子の利益が相反するケースがあります。

例えば、ある人が死亡し、相続人として妻、未成年の子A、未成年の子Bの3人がいたとします。

このとき、妻は未成年の子A、Bの親権者ですが、未成年の子A、Bとともに死亡した夫の共同相続人でもありますので、形式的外形的に妻と子A、Bの利益が相反することになります。

そのため、妻は子A、Bのいずれについても代理することができず、遺産分割をするためだけの特別代理人の選任を裁判所に請求し、妻、子Aの特別代理人、子Bの特別代理人の3人で遺産分割協議をすることになります。

また、ある人の妻が死亡した後に妻の父が死亡したことから、未成年の子Aと未成年の子Bが妻の父の相続について妻を代襲相続したとします。

このとき、父は共同相続人ではありませんので、子A、Bと利益が相反することはありません。

しかし、子Aと子Bは共同相続人であり、形式的外形的に利益が相反する関係にありますので、父が子Aと子Bの双方を代理することはできず、一方の子について特別代理人の選任を裁判所に請求し、子Aの法定代理人としての父、子Bの特別代理人の2人で妻の父の遺産分割手続に参加することになります。

なお、特別代理人の選任をしないで遺産分割協議を成立させたとしても、そのような遺産分割協議は法律上当然に無効となります。

相続人の中に認知症の人がいるとき

認知症遺産分割協議を有効に成立させるためには、相続人全員に意思能力がなければなりません。

ここで意思能力とは、事理を弁識する能力(行為の結果を判断することができる精神能力)のことです。

意思能力が完全に欠如した人がある行為をしたとしても、その行為は法的には無効となります(民法3条の2)。

そのため、認知症によって意思能力を欠く常況にある相続人(以下「Aさん」と呼びます)がいると、そのままでは遺産分割協議をすることができませんので、家庭裁判所に対し、Aさんを代理して遺産分割協議に参加する人(この人のことを「成年後見人」と言います)の選任を申し立て、Aさんの代わりに成年後見人に遺産分割協議に参加してもらって遺産分割協議を成立させることになります。

しかし、未成年の子の特別代理人は遺産分割が終わるまでの一時的な措置であったのに対し、痴呆症の人の成年後見人については恒久的な措置であり、本人が死亡するか意思能力を欠く常況から脱出するまで成年後見をやめることはできません。

成年後見人が専門職(弁護士など。誰を成年後見人にするかは、家庭裁判所が職権に基づき、申立人の意向に関係なく全くの独断で決めます)のときは、月額2万円から6万円程度の報酬が発生し続けることになります(報酬額を幾らにするかについても、家庭裁判所が職権に基づき、申立人の意向に関係なく全くの独断で決めます)。

相続人の中に行方不明の人がいるとき

相続人の中に行方不明の人がいるとき、失踪宣告をする方法と不在者財産管理人を選任する方法の2つの方法があります。

失踪宣告とは、生死不明な状態が7年以上続いたときに失踪宣告の審判によって死亡したものとみなす制度です。

行方不明者の代わりに行方不明者の相続人を交えて遺産分割協議をすることになります。

不在者財産管理とは、行方不明者の財産を管理する人(不在者財産管理人)の選任を裁判所に求める制度です。

行方不明者の代わりに不在者財産管理人を交えて遺産分割協議をすることになります。

不在者財産管理人については恒久的な措置であり、本人が死亡するか行方不明状態でなくなるかするまでやめることができません。

行方不明者に不在者財産管理人の報酬を賄うだけの財産がないときは、申立人が不在者財産管理人の報酬相当額を予納しなければ、裁判所は不在者財産管理人を選任してくれませんので、数十万円程度の費用負担を覚悟する必要があります。

まとめ

このように、相続人の中に未成年者、痴呆症の人、行方不明な人がいるときには上記のような注意点があります。

未成年者の特別代理人は一時的な措置ですが、痴呆症の人の成年後見人や行方不明者の不在者財産管理人は恒久的な措置になりますので、注意してください。

遺産分割についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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