遺産の固定資産税などの管理費用は誰が負担するか?

遺産の負担

「遺産の固定資産税などの管理費用は誰が負担するのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、遺産の固定資産税などの管理費用は誰が負担することになるのかついて解説します。

遺産の管理費用とは

民法896条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と規定しています。

そのため、相続財産を構成する個々の財産は、相続開始から遺産分割が行われるまでの間、相続人全員で共有(遺産共有)することになります(民法898条)。

民法918条は「相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。」と規定し、民法885条は「相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。」と規定しています。

そこで、「相続財産に関する費用」、すなわち遺産の管理費用にはどのような費用が含まれるのか、遺産の管理費用は相続財産から支弁すると言うけれども具体的には誰がどのようにして支払うのかが問題となります。

遺産の管理費用にはどのような費用が含まれるのか

遺産の管理費用とは、遺産自体の保存、利用、改良に要した費用のことであると解釈されています。

具体的には、遺産不動産の固定資産税、賃料(遺産が賃借権のとき)、遺産土地の改良費や分筆費用、遺産建物の修理・改築費用、上下水道料金、電気料金、火災保険料などが遺産の管理費用に該当します。

このほか、相続税と葬儀費用について、遺産の管理費用に含める見解と含めない見解が古くから存在し、裁判例や学説の理解は分かれています。

ただ、裁判実務の趨勢は両方とも遺産管理費用には含めない(相続税は各相続人が取得した遺産に応じて負担し、葬儀費用は葬儀会社と契約した喪主が負担する)ということになります。

遺産の管理費用は誰がどのようにして支払うのか

家の点検民法885条は、遺産の管理費用について相続財産の中から支弁すると規定していますが、相続財産の中に現金や預貯金がないときや支出に反対する相続人がいるときは相続財産の中から支出することができません。

理屈としては、相続財産は相続人全員の共有に属するため、その管理費用は各相続人がその相続分に応じて負担すべきことになります(共有物に関する民法253条参照)。

ここで「相続分」には法定相続分と具体的相続分の2種類のものがあります。

管理費用の負担割合をどちらの相続分によるべきかについて学説の理解は分かれていますが、裁判実務では法定相続分に応じて負担額を判断しています(具体的相続分は特別受益や寄与分を確定した後でなければ判明しないため、具体的相続分を基準にしてしまうと遺産管理が事実上不可能となりかねないからです)。

しかし、理屈では各相続人が法定相続分に応じて管理費用を負担すべきであると言っても、現実問題として負担に反対する相続人がいるときは、相続人の誰かが反対する相続人の負担分について立て替えて支払う必要があります。

また、

  1. 相続人の1人が他の相続人に相談せず、独断で相続財産の中の預貯金を解約して遺産管理費用を支払う
  2. 相続人の1人が他の相続人に相談せず、独断で自身の固有財産から支払った後に相続財産の中から清算を求める
  3. 相続人の1人が他の相続人に相談せず、独断で自身の固有財産から支払った後に他の相続人に対して法定相続分に応じた負担を求める、
  4. 相続開始後も遺産不動産(賃貸物件)を管理して賃料を独占している相続人が受領した賃料から遺産管理費用相当額を差し引くべきであると主張する

などのケースでは、他の相続人から「支出した管理費用とされるものの中に不適切なものや使途不明金が混在している」などという反論がなされることもあり、遺産分割の協議に入る前に事態が紛糾して話し合いにならないといった事態も珍しくありません。

遺産管理費用の清算を遺産分割の対象にすることができるか

遺産管理費用の清算を遺産分割の対象にすることができるかどうかについて、裁判例や学説は、積極説、消極説、中間説(金額が確定できるものは遺産分割の対象にしてもよいが、民事訴訟を選択することもできる)の3種類に分かれています。

この点について、東京家庭裁判所家事第5部は消極説が妥当であるとしています。

なぜなら、遺産の管理費用の問題は、相続開始後に発生した債務負担の問題に過ぎないと言えるからです。

そのため、遺産管理費用の負担について相続人間に争いがあるときは民事訴訟を提起してそちらで解決するように促されることになりますが、遺産分割手続の中で遺産管理費用についても清算する旨の合意を全ての相続人がした場合には、遺産分割調停において遺産管理費用についての調整を試みる程度のことはしてくれます。

まとめ

このように、遺産の管理費用は相続財産の中から支出するのが原則ですが、相続財産の中に現金や預貯金が十分にないときは各相続人が法定相続分に応じて負担することになります。

とはいえ、事前に十分な話し合いをせずに独断で管理費用を支払った相続人がいるようなケースでは、その支出が適切だったかどうかをめぐって深刻な争いに発展することもあり、遺産分割調停の中では解決することができませんので、注意が必要です。

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この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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