死亡退職金は遺産分割の対象となるか?

死亡

最終更新日 2024年6月30日

「死亡退職金は遺産分割の対象になるのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、死亡退職金とはどのようなもので、遺産分割の対象になるのかどうかについて解説します。

死亡退職金とは

死亡退職金とは、死亡によって退職し、これに伴って支給される退職金のことです。

死亡退職金と遺産分割の関係について最初に整理しておくと、死亡退職金が遺産に含まれると言えるのであれば遺産分割の対象になりますし、死亡退職金が受け取った人(受給権者)の固有財産であると言えるのであれば、死亡退職金は遺産とは言えませんので、遺産分割の対象にはならないということになります。

死亡退職金には2種類の性質、すなわち、賃金の後払いとしての性質と遺族の生活保障としての性質があると言われています。

そのため、賃金の後払いとしての性質を重視する立場からは死亡退職金の遺産性を肯定する方向で、遺族の生活保障としての性質を重視する立場からは死亡退職金の遺産性を否定する方向でそれぞれ解釈されることになると言われています。

しかし、裁判実務では、死亡退職金の法的性質によって死亡退職金の遺産性を判断するという手法ではなく、死亡退職金の支給規定の有無で場合分けをし、死亡退職金の支給規定がある場合には支給規定の内容を吟味して遺産性を判断し、死亡退職金の支給規定がない場合には従来の支給慣行や支給の経緯などから遺産性を判断するという手法が採用されていると言われています。

最高裁判所判決のご紹介

退職金死亡退職金の遺産性については、これまでに複数の最高裁判所判決が出されています。

最高裁判所昭和58年11月27日判決は、受給権者の範囲や順位について相続人の範囲や順位とは異なる定めをした条例に基づき死亡退職手当て(地方公務員ですので「手当」になります)を支給したケースについて、死亡退職手当ての遺産性を否定し、受給権者の固有財産であると判断しています。

地方公務員の死亡退職手当ての支給規定は各地方公共団体の条例で定めるものとされているところ、総務省は、昭和28年9月10日自治丙行発第45号「職員の退職手当に関する準則」において、地方公務員の退職手当ては国家公務員の例に準ずる旨を各地方公共団体に示していることから、国家公務員の死亡退職手当てや国家公務員の例に準ずる内容の条例がある地方公務員の死亡退職手当てについてまでこの最高裁判決の考え方が妥当することになるでしょう。

また、最高裁判所昭和55年11月27日判決は、受給権者の範囲や順位について相続人の範囲や順位とは異なる定めをした死亡退職金支給規定に基づき死亡退職金を支給したケースについて、最高裁判所昭和62年3月3日判決は、死亡退職金規定は存在しないものの死者の妻に死亡退職金を支給したケースについて、いずれも死亡退職金の遺産性を否定し、受給権者の固有財産であると判断しています。

ところで、死亡退職金が遺産なのか受給権者の固有財産なのかという問題は、生命保険が遺産なのか保険金受取人の固有財産なのかという問題と酷似しています。

そのため、民法解釈の最高の権威書とされる「新版注釈民法」も、「死亡退職金請求権やその他の遺族給付請求権は、そもそも被相続人に帰属したことがないゆえに、相続の対象とはなりえず、受取人が相続人とされている場合も、相続人が相続財産として受給するのではなく、固有の財産として受給するのであって、生命保険金の受取人が被保険者の相続人と定められた場合と同様である。そして、受け取った死亡退職金やその他の遺族給付金は、被相続人から取得したものではないがゆえに、相続の前渡しの意味もなく、特別受益(903)ともならない。ただし、相続人間で著しい不公平が生じるときには、例外的に、遺贈に準じて特別受益性や遺留分減殺請求の対象とすることは認められよう。」と述べ、死亡退職金の遺産性を否定し、受給権者の固有財産であるとしています。

まとめ

このように、裁判例の主流は、死亡退職金の遺産性を否定して受給権者の固有財産であると判断していますので、死亡退職金が遺産分割の対象にはなることはありません。

また、死亡退職金の受給権者ではない相続人から「死亡退職金は特別受益にあたる」との主張がなされたとしても、原則としてそのような主張が認められることはありません。

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最終更新日 2024年6月30日

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学経済学部卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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