使用貸借は相続されるのか?貸主、借主が死亡した場合の違いは?賃貸借の相続とどう違うのか?
最終更新日 2024年10月9日
- 使用貸借は相続されるのか?
- 貸主、借主が死亡した場合の違いは?
- 賃貸借の相続とどう違うのか?
ここでは、使用貸借は相続されるのか、貸主が死亡した場合と借主が死亡した場合の違いについて、賃貸借の相続と比較してご説明します。
使用貸借とは?
使用貸借とは、目的物を無償で(=タダで)使用収益することです(民法593条)。
無償という点が、目的物を有償で(=賃料を支払って)使用収益する賃貸借と異なります。
これを借主の側から見ると、借主がタダで借りることができる権利が「使用借権」(「しようがりけん」と読みます)であり、借主がお金を払って借りることができる権利が「賃借権」(「ちんじゃくけん」と読みます)です。
借主が死亡した場合
借主が死亡すると、使用借権は消滅します(民法597条3項)。
そのため、借主の死亡後も借主の相続人との間で使用貸借関係を継続するという特約がない限り、借主の相続人が使用借権を相続することはなく、借りていたものは速やかに貸主に返還しなければなりません。
これに対し、賃借権は、借主の死亡によっては消滅せず、相続人が相続します。
相続人が複数いる場合は、賃借権の準共有となり(所有権以外の財産権を共有することを「準共有」といいます)、遺産分割の対象になります。
なお、居住用建物の賃借権(借家権)については、相続の対象にならないとの見解もありますが、判例は相続の対象になることを認めています(ただし、最高裁判所平成2年10月18日判決は、公営住宅を使用する権利については当然には相続の対象にならないと判断していますので、公営住宅を使用する権利を相続することができるかどうかは条例や利用規約等の定めによることになります)。
貸主が死亡した場合
使用貸借、賃貸借ともに、貸主の地位は、相続人が相続します。
したがって、貸主の死亡が契約の終了条件になっていない限り、貸主の死亡によって使用借権や賃借権が消滅することはありません。
相続税の計算では注意
使用借権はタダで借りる権利ですので、賃借権と異なり、財産的価値がありません。
そのため、相続税を計算する際も、使用貸借契約によって貸している土地は自用地(使用借権が設定されていない更地)として評価されます。
また、使用借権が建物所有目的であったとしても借地権の評価額はゼロになります(昭和48年11月1日直資2-189)。
借主が相続人の場合
貸主が死亡し、借主が貸主の相続人の場合にも、注意が必要です。
例えば、死亡した父が長男に対し、父名義の土地建物を無償で貸していたというケースで考えてみます。
この場合には、長男の使用借権は貸主である父の死亡によっては消滅しないため、長男は父の死亡後も父名義の土地建物を使用借権に基づいて無償で使用することができます。
長男は、自身の使用借権を第三者に対抗する(権利を主張する)ことはできませんが、他の相続人には主張することはできます。
また、他人が占有している土地建物は換価しにくいです。
なので、長男はその土地建物を事実上占有することができます。
その結果、当該土地建物は、使用借権相当額だけ減価したといえますので、その減価額が長男の特別受益として扱われることになります。
減価額の金銭評価は非常に難しいのですが、通常は更地価格の1~3割の範囲内で決定されているようです。
まとめ
このように、一口に使用貸借の相続と言っても、被相続人が貸主なのか借主なのかによって検討すべき点が異なります。
使用貸借の相続についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。
最終更新日 2024年10月9日