遺産分割における株式の評価はどうすればよいのか?
最終更新日 2024年6月30日
「遺産分割をする際、株式の評価はどうすればよいのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、株式を評価する方法について解説します。
株式会社の株式の相続
株式会社の株式も相続財産となりますが、金銭債権のように当然に分割されることはなく、全ての株式について共同相続人が準共有することになります(最高裁判所昭和52年11月8日判決)。
例えば、相続人として配偶者、子A、子Bがおり、同じ会社の株式が120株あるケースで考えてみます。
この場合、配偶者60株、子A30株、子B30株というように当然に分割されるのではなく、遺産分割をするまでの間、120株の1株1株について、3人の相続人が共同で所有する形のままになります。
原則として株式の評価が必要
遺産分割は、遺産総額にそれぞれの相続人の具体的な相続分率を掛け算して行います。
その際は遺産総額を正確に算出しなければならず、そのためには遺産を構成する株式を的確に金銭評価する必要があることから、原則として株式を評価しなければならないことになります(ここで「原則として」と記載したのは、法定相続分に応じて株式を分配したり、遺産分割手続の中で売却してその売却代金を法定相続分に応じて分けたりするのであれば、株式を評価する必要はないからです)。
株式には上場株式と非上場株式がありますので、分けて説明します。
上場株式を評価する方法
上場株式は、株式市場で取引されていることから、実際の取引価格に基づいて時価を容易に把握することができます。
実務では、通常、審判予定日に近い特定の日を基準日として定め、証券取引所における取引価格に基づいて株式を評価しています。
ケースによっては、特定の基準日ではなく、一定の期間(3か月程度)の平均額を採用する場合もあります。
非上場株式を評価する方法
上場株式とは異なり、非上場株式については客観的な市場価格が形成されているものではないため、次の4種類の評価方法が考案されています。
①純資産方式(会社の総資産価額から負債等を控除した純資産価額を発行済株式数で割って評価する方法)
②配当還元方式(会社の配当金額を発行済株式数で割って評価する方法)
③類似業種比準方式(類似する業種の会社群の株式に比準して評価する方法)
④混合方式(①から③の方式を組み合わせて評価する方法)
また、相続税を計算する際に用いられる方式(財産評価基本通達で採用されている方式)もあります。
すなわち、相続人が同族株主になる場合は、会社の規模に応じて、大会社は類似業種比準方式(純資産方式も選択することができます)、中会社は類似業種比準方式と純資産方式との併用方式、小会社は純資産方式、同族会社にならない場合は配当還元方式を採用して株式を評価して相続税を計算することになります。
税理士に依頼して相続税の申告を済ませているケースでは、税理士が財産評価基本通達に基づく方式によって非上場株式を評価し、その金額が相続税申告書に記載されています。
そのため、相続人全員が合意すれば、相続税申告書に記載された金額を評価額として採用することができますが、相続人の中に反対する人がいるときは、公認会計士等の専門家による鑑定を実施することになります。
とはいえ、鑑定人の報酬は相続人が負担することになるため、気軽な気持ちで鑑定を実施することはできません。
そこで、ひとつの考え方をご紹介します。
株式会社が破綻したとき、残余財産があれば発行済株式数で割って株主に分配されることになります。
つまり、株式の客観的な価値は会社の清算価値に等しいと言えます。
このような考え方に賛成できるのであれば、純資産方式に基づいて1株あたりの評価額を自分で計算してみて、それを相続税申告書に記載された評価額と比較し、両者の金額が大差ないのであれば相続税申告書に記載された評価額で合意するのも一つの方法といえるのではないでしょうか。
まとめ
このように、株式、とりわけ非上場株式の評価は簡単ではなく、相続人全員で評価額について合意できなければ、費用を予納した上で鑑定を実施することになります。
株式の評価についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。
最終更新日 2024年6月30日