遺留分を請求されたが、お金がない場合はどうしたらよいか?

遺留分を請求されたが、お金がない場合はどうしたらよいか?

遺留分を請求されたが、お金がない場合はどうしたらよいのでしょうか?

ここで詳しく説明します。

遺留分とは

まずは前提知識をおさらいします。

遺留分は、法定相続人(兄弟姉妹が相続人となる場合を除く)に最低限保証された権利です。

被相続人が遺贈や生前贈与をしたことにより、法定相続人が遺留分に相当する財産を受けることができない場合には遺贈や生前贈与を受けた人に対して返還請求ができます。

遺留分を算定する上での財産額は、「相続財産」+「生前贈与の額」-「債務額」で計算します。

生前贈与は、相続人対するものは被相続人の死亡前10年間にされたもの、相続人以外に対してされたものは被相続人の死亡前1年間にされたものが対象になります。

ただし、被相続人と受贈者(財産をもらった人)が遺留分を侵害することを知ってされたものについては期間の制限がなく対象となります。

次に遺留分割合は、被相続人の直系尊属のみが相続人となる場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1となります。

つまり、算定の基準となる額が4000万円である場合で法定相続人が配偶者と子供2人である場合は2分の1となりますから、2000万円が遺留分の総額になります。

これに各相続人の相続分を掛けると1人ずつの遺留分が出ます。

配偶者 2000万円×4分の2=1000万円

子供1人 2000万円×4分の1=500万円

となります。

例えば、被相続人が遺言で配偶者にすべての財産を相続させた場合には、子供はそれぞれ500万円ずつを配偶者に返還するように請求できることになります。

請求された場合には、令和元年7月1日(改正民法施行日)以降に開始した相続については侵害した額を返還することになりましたが、それ以前に開始した相続については遺贈された財産の持分を返還することになります。

例えば、遺贈や贈与されたのが預貯金である場合には改正前後で結論は同じになると考えられますが、不動産であれば結論が異なります。

すなわち、改正前ならば遺留分侵害額の割合に応じた不動産の持分を返還されることになるのに対し、改正後であればたとえ遺贈や贈与が不動産であっても侵害した遺留分の相当額の金銭を請求できることになります。

遺留分侵害額請求をされたがお金がない場合

遺留分を請求されたが、お金がない場合はどうしたらよいか?2では、遺留分侵害額請求をされたものの贈与や遺贈を受けた財産が不動産や株式のみである場合で、返還に充てるだけの預貯金がない場合には、譲り受けた不動産を売却しない限り返還できるお金が用意できないというケースはどうすればよいでしょうか。

改正前に開始した相続であれば、売却して換金しなくても侵害額相当の持分を返還すればよく、以後は遺留分を請求した相続人との共有状態になります。

一方、改正後に開始した相続であれば遺留分権利者は侵害額に相当する金銭を請求できるため、受遺者や受贈者は換金を余儀なくされることになります。

ただ、その財産が居住している不動産である場合には退去しなければならないことになり、すぐに売却してお金に換えるのが難しいケースもあります。

実際に改正後にはこのようなケースを経験された方もおられるのではないでしょうか?

令和元年7月1日施行の改正民法の中でこの点に対応した条文があります。

(民法第1047条第5項)

「裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第1項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。」

→遺留分権利者から請求を受けて「今はお金がないから少しずつ分割で返したい」旨を伝えて相手が承諾してくれた場合はよいのですが、承諾してくれない場合にはこの規定を利用するしかありません。

ただ、この裁判上の請求は訴えを提起する必要があります。

遺留分権利者から返還請求の訴訟を提起された場合に、その訴訟の中で期限の許与を主張して認めてもらうという方法もあります。

この場合に何もせずに遺留分権利者の勝訴判決が確定したとすれば、その勝訴判決に基づき差押えをされることになりますから、すぐに返還できない場合には期限の許与を主張して返還時期を伸ばしてもらうようにしましょう。

なお、条文の中に「全部又は一部の支払いにつき」とあるのは、例えば遺留分侵害額が500万円で200万円は預貯金からすぐに用意できるが残りの300万円は時間がほしいという場合を想定しています。

また、主張すれば必ず認められるわけではありませんが、裁判上で主張しなければ認められません。

いつまで期限が猶予されるかについては裁判所の判断に委ねられています。

まとめ

遺留分を請求されたが、お金がない場合はどうしたらよいか?3今回は、遺留分侵害額請求をされた場合にすぐに返還に応じることのできないケースの対応方法について解説しました。

遺留分を請求された場合にも、すぐに返還に応じることができない場合も自分で対処することが難しい問題です。

早めに弁護士に相談して対応策をとるようにしましょう。

最終更新日 2024年7月21日

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学経済学部卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

最終更新日 2024年7月21日

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