相続財産の破産とは?手続はどうなるのか?

最終更新日 2024年9月15日
- 相続財産の破産とは?
- 手続はどうなるのか?
ここでは、相続財産の破産が必要と思われる場合、まず何を考え、どのような手続をすればよいかについて知ることができます。
相続財産の破産とは?
相続財産の破産とは、「相続財産をもって相続債権者及び受遺者に対する債務を完済することができないと認めるとき」(破産状態)のことです(破産法223条)。
相続財産の破産を申し立てることができる人は、相続債権者、受遺者、相続人、相続財産管理人、遺言執行者になります(破産法224条1項)。
ただし、相続人の側からすれば、法定相続人は相続放棄をすれば初めから相続人ではなかったものとみなされますので、相続財産が破産状態のときには相続放棄を選択するのが通常です。
また、事情があって相続をするときも、清算手続をしたいのであれば、厳格な清算手続である破産手続ではなく、簡易な清算手続である限定承認を選択することができます。
限定承認のほうが破産手続よりも手間も時間もかからずコストが安いことや、相続財産の破産をしても不足分があるときには相続債権者から相続人に請求されてしまうことから、通常は限定承認のほうを選択することになります。
また、相続債権者の側からしても、相続人がいるときは相続人に対して請求したほうが簡便です。
また、相続人がいなかったり全ての相続人が相続放棄をしたりしたときは、財産管理人の選任申立てをすれば、破産手続よりも手間も時間もかからずコストが安く清算手続をすることができます。
したがって、実務で相続財産の破産が選択される例は極めて少ないと言われています。
相続人の破産との違い
相続人の破産とは、相続人自身の固有の財産について、積極財産(プラスの財産)と消極財産(マイナスの財産)を比較したとき、消極財産のほうが多く、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(「支払不能」。破産法2条11項)のことです。
相続人の破産は、相続人名義の財産が支払不能になったときであるのに対し、相続財産の破産は、相続財産(被相続人名義の財産)が支払不能になったときである点が違います。
どのような場合に利用するか?
相続財産の破産は、実務上、利用される例は極めて少ないと言われています。
なぜなら、前述したとおり、相続人の側からすれば限定承認の申述、相続債権者の側からすれば相続財産管理人の選任申立てという、簡易な清算手続が存在するからです。
これら簡易な清算手続では満足できず、厳格な清算手続を求めるのであれば、相続財産の破産を選択することになります。
ただし、破産手続は極めて複雑ですので、申立てをする際は弁護士に依頼しなければなりませんし、破産裁判所は破産管財人を選任するため、破産管財人の報酬も申立人が用意しなければなりません。
手続き
原則として相続開始時から3か月以内に(破産法225条)、被相続人の相続開始時の住所を管轄する地方裁判所に対し(破産法222条)、申立書を提出しなければなりません。
ただし、相続人が不存在であったり、限定承認や財産分離がなされりしたときは、相続財産が相続人固有の財産と混ざることがないため、これらの手続中であれば申立てをすることができます(民法941条1項)。
破産管財人による厳格な清算手続が終了すると、相続財産の破産手続は終了しますが、消極財産が残ったときは相続人がそれを相続することになります。
まとめ
このように、実務では相続財産の破産が選択される例は極めて少なく、清算手続が必要な場合には限定承認の申述ないし相続財産管理人の選任申立てが選択されることになります。
最終更新日 2024年9月15日