財産分離とは?どのような場合に利用するのか?

財産分離とは?どのような場合に利用するのか?

他人にお金を貸していたが、その人が債務を相続することになった場合、どうしたらよいでしょうか?

ここでは、財産分離とはどのようなもので、財産分離をするために知っておきたいことについて解説します。

財産分離とは

財産分離とは、相続の開始によって被相続人の財産(相続財産)と相続人自身の固有の財産が混ざることを防ぐために、相続債権者、受遺者、相続人の債権者の請求によって、相続財産を分離する制度のことです。

分離された相続財産は「特別財団」となり、相続人自身の固有財産とは別個のものとして管理・清算されることになります。

どのような場合に必要か?

財産分離とは?どのような場合に利用するのか?2相続人が限定承認や相続放棄をしなければ、被相続人名義の財産は相続人名義の財産と混ざってしまいます。

被相続人の債権者(相続債権者)としては、相続人名義の財産が債務超過のときは被相続人名義の財産が目減りして不利益を受けることになります。

また、相続人の債権者としては、被相続人名義の財産が債務超過のときは相続人名義の財産が目減りして不利益を受けることになります。

財産分離をすると、被相続人の債権者は被相続人名義の財産から優先弁済を受けることができ、相続人の債権者は相続人名義の財産から優先弁済を受けることができるようになります。

これらの点で大きなメリットがあるものの、実務で利用される例は極めてまれであると言われています。

限定承認との違い

限定承認は、相続財産のうち、消極財産のほうが多かったとしても相続財産の限度で支払えばよい(相続人自身の固有の財産から弁済しなくてもよい)というものです(民法922条)。

つまり、限定承認は、相続人の保護を目的とした制度になります。

これに対し、財産分離は、被相続人の債権者ないし相続人の債権者の保護を目的とした制度になります。

種類

財産分離には2種類のものがあります。

相続債権者・受遺者の利益を図るため、それらの者の請求によってなされる財産分離を第1種の財産分離と言い、相続人の債権者の利益を図るため、その請求によってなされる財産分離を第2種の財産分離と言います。

第1種の財産分離は、相続財産が良好であるものの、相続人自身の固有の財産は債務超過にあるとき、第2種の財産分離は、相続財産が債務超過にあるものの、相続人自身の固有財産は良好であるときに行われます。

第1種の財産分離が行われると、相続債権者や受遺者が相続財産について優先弁済を受けることができるようになり、第2種の財産分離が行われると、相続人の債権者が相続人自身の固有の財産について優先弁済を受けることができるようになります。

手続き~第1種の財産分離

財産分離とは?どのような場合に利用するのか?3相続債権者、受遺者は、相続財産と相続人自身の固有財産が混合しない間、あるいは混合しても相続開始時から3か月以内であれば、家庭裁判所に対し、財産分離の請求をすることができます(民法941条1項)。

ここで「混合」とは、事実上、両者の識別ができなくなることを言います。

相続財産が費消されたり処分されたりすると、「混合」が認められやすいと言えるでしょう。

分離を命じる審判がなされると、分離請求者は、5日以内に相続債権者・受遺者に対し、財産分離がなされたこと及び一定期間内に配当加入をすべき旨を通知しなければなりません(民法941条2項)。

上記の期間経過後は、相続人は、相続人自身の債権者に優先して、分離請求者・配当加入の申出をした相続債権者・受遺者に対し、相続財産から弁済することになります(民法947条2項)。

そして、相続財産から全額の弁済を受けることができなかった相続債権者らは、相続人の固有の財産について権利行使をすることができます。

ただし、民法948条は、この場合は相続人の債権者が優先すると規定しているため、相続人に対する債権が全て完済された後でなければ相続債権者らは相続人自身の固有の財産に権利行使できないという著しい不利益を受けることになります。

手続き~第2種の財産分離

相続人の債権者は、相続財産と相続人自身の固有財産が混合しない間、あるいは混合しても相続人が限定承認をすることができる間であれば、家庭裁判所に対し、財産分離の請求をすることができます(民法950条1項)。

分離を命じる審判がなされると、分離請求者は、5日以内に相続債権者・受遺者に対し、財産分離がなされたこと及び一定期間内の配当加入をすべき旨を通知しなければなりません(民法950条2項ただし書)。

相続人の債権者は、第2種の財産分離をすることで、相続債権者・受遺者に対し、相続人に対する債権が全て完済された後でなければ相続債権者らは相続人固有の財産に権利行使できないという著しい不利益を与えることができます。

まとめ

このように、財産分離をする際には上記のような注意点があります。

財産分離についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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