代襲相続と遺留分について知っておきたい注意点まとめ
最終更新日 2024年6月30日
「祖父が死亡して長男に全て相続させる旨の遺言が発見されたけど、祖父より前に死亡した長女の子である私たちは祖父の遺産を何も相続できないのだろうか」というようなお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、代襲相続や遺留分とはどのようなもので、知っておきたい注意点について解説します。
代襲相続とは
代襲相続とは、相続開始と同時かそれより前に、相続人となるべき者(被代襲者)が死亡、相続欠格、廃除によって相続権を失ったとき、その者の直系卑属がその者が受けるはずだった相続分を承継することを認める制度のことです。
なお、相続人となるべき者が相続放棄をしても、その直系卑属が代襲相続することはありません(代襲相続原因は、死亡・欠格・廃除の3種類だけです)。
代襲相続ができるのは、被相続人の子の直系卑属(孫やひ孫。民法887条2項、3項)と兄弟姉妹の子(甥姪。889条2項、901条2項)に限定されます。
被相続人の子の直系卑属は再代襲ができますが(被相続人の子A、Aの唯一の子B、Bの唯一の子Cがおり、AとBが被相続人の死亡時に既に死亡しているときは、CがAの相続分を承継することになります。これを「再代襲」と言います)、被相続人の甥・姪の子は再代襲ができません。
なお、被代襲者が相続権を失ったときに存在していなくても、相続開始時に存在していれば、代襲相続人になることができると考えられています。
そのため、ある相続人が欠格や廃除によって相続権を失った後、被相続人が死亡するまでの間に実子(胎児の状態でも可)や養子ができたときは、その実子や養子は代襲相続人となります。
これに対し、被相続人の直系尊属(親や祖父母など)や配偶者には代襲相続は認められていません。
代襲相続が認められると、代襲者は、被代襲者が受けるはずだった相続分を承継することになります。
代襲者が複数人いるときは、被代襲者の相続分は均等に頭割りで分割されます(いわゆる「株分け相続」。民法900条1項ただし書・900条4号)。
遺留分とは
人は、自己の所有財産を自由に処分することができます。
この処分には、生前処分のみならず遺言による死後処分も含まれます。
しかし、被相続人と一定の身分関係がある者の中には、被相続人の財産に依存して生活していた者もいるため、その者の生活保障に配慮する必要があります。
また、共同相続人相互間における公平な遺産相続を実現する必要もあります。
そこで、民法は、遺産について、被相続人が自由に処分できる「可譲分」と自由に処分できない「遺留分」とに分け、後者について遺留分を侵害された相続人による遺留分侵害額請求を認めました。
すなわち、遺留分とは、一定の相続人に法律上保障されている最低限の取り分のことであり、被相続人の生前の贈与や遺贈によっても侵害することができないものになります。
民法が遺留分を認めている相続人は、兄弟姉妹を除く相続人になります。
すなわち、直系卑属(子やその代襲相続人、再代襲相続人)、直系尊属(親や祖父母など)、配偶者です。
胎児も、生きて生まれれば子としての遺留分を持ちます(民法886条)。
遺留分権はあくまでも相続人を保護するための権利ですので、相続人は、遺留分侵害額請求をしてもしなくても構いませんし、遺留分権を放棄することもできます。
ただし、被相続人の生前における事前放棄を無制限に認めると、被相続人の圧力による遺留分権利者の意思に反する放棄が発生し、遺留分を認めた趣旨を没却するおそれがあることから、被相続人の生前における遺留分権の事前放棄には家庭裁判所の許可が必要とされています(民法1049条1項)。
遺留分の割合については、相続人が直系尊属のみであるときは3分の1、その他の場合には2分の1です(民法1042条1項1号、2号)。
そのため、相続人として妻と3人の子がいるときは、それぞれの子の遺留分は、2分の1(子全員の相続分)÷3(子の数)×2分の1(遺留分の割合)=12分の1となります。
代襲相続と遺留分
被相続人が死亡し、「長男に全ての遺産を相続させる」旨の遺言書がのこされており、相続人には被相続人の配偶者と3人の子(長男、長女、次女)がいるところ、長女は被相続人よりも前に死亡し、長女には夫Aと子BとCがいるケースで考えてみます。
このとき、長女が生きていれば、長女の遺留分は、2分の1(子全員の相続分)÷3(子の数)×2分の1=12分の1となります。
そして、長女の相続人には夫Aと子B、Cがいるところ、配偶者は代襲相続人とはなれないため、長女の代襲相続人は子BとCになります。
長女の遺留分12分の1は代襲相続人に均等に頭割りで分割されることになるため、子BとCは12分の1÷2(代襲相続人の数)=24分の1ずつの遺留分が発生することになります。
子BとCは、遺留分侵害額請求をすれば、長男に対し、遺産の24分の1に相当する金銭の支払いを請求することができることになります。
まとめ
このように、代襲相続と遺留分が同時に発生するときには上記のような注意点があります。
相続についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。
最終更新日 2024年6月30日