遺産分割調停や審判はどこの裁判所に申し立てるのか?管轄について説明

裁判所の管轄

「遺産分割調停をすることになったものの、どこの裁判所に申し立てればよいのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、遺産分割調停や遺産分割審判の管轄裁判所について解説します。

調停と審判の違い

遺産分割調停は、当事者(申立人と相手方。遺産分割調停では全ての法定相続人が申立人と相手方のどちらかになります)が決められた期日に裁判所に集まって行われます。

期日はおおむね毎月1回程度で、裁判所には申立人控室と相手方控室が用意されており、対立する当事者が同じ部屋で待つことにならないように配慮されています。

調停の開始時刻になると、申立人と相手方が交互に家事調停委員(裁判所が委嘱した民間有識者2人。女性の当事者に配慮して男女ペアであることが多いです)に呼ばれ、事情や希望を聴取された後、調停委員からの様々な助言や提案を受けて一定の合意形成を目指した話し合いを行います。

調停成立時を除き、通常は申立人と相手方が裁判所で直接顔を合わすことはなく、調停委員を介した伝言ゲームのような形で調停手続は進行していきます。

調停委員は、当事者双方の話を聞き、その内容を裁判官に報告したり相談したりして、一定の合意形成を目指します(調停委員会は、裁判官1名、民間有識者である調停委員2名の合計3名から構成されますが、裁判官は同時並行的に開催されている複数の調停委員会を掛け持ちしているため、調停成立時を除いて通常は当事者の前には出てきません)。

調停委員は、一定の合意形成ができそうであれば、遺産分割案(事前に裁判官が目を通しています)を作成して当事者に提示します。

全ての当事者が遺産分割案に承諾する旨の意思表示をしたら裁判官を呼び、裁判官が調停条項を読み上げて当事者の意思を最終確認した上で調停成立となって事件は終結しますが、このときに当事者のうち1人でも反対する人がいれば調停不成立になって遺産分割審判に自動移行することになります。

このように調停とは、当事者が互いに譲りあい、話し合いによって事件を解決する制度ということになります。

これに対し、遺産分割審判は民事裁判と同じようなものです。

法壇に座っている裁判官(家事審判官)の面前で当事者双方が主張立証を尽くし、最終的に裁判官が審判(民事訴訟で言うところの判決のようなもの)を宣告して事件が終結します(遺産分割審判の途中で裁判官から遺産分割案が提示されることがあります。当事者全員がそれを承諾すれば、調停手続に付して調停成立によって事件が終結することになります)。

このように、調停とは裁判所で行う話し合いであるのに対し、審判とは話し合いが決裂した後に裁判所が事件を解決するために出す強制的な命令という整理になります(遺産分割調停を申し立てることなく、いきなり遺産分割審判を申し立てることもできます。しかし、そのまま審判手続が進行することはなく、職権で調停に付されることになるのが通常です)。

遺産分割調停・審判の管轄

管轄がわからない管轄裁判所とは、どこの裁判所に訴状や申立書を提出すればよいのか(訴状や申立書の提出先となる裁判所)という意味です。

遺産分割調停は申立書を裁判所に提出して行いますが、申立書は家庭裁判所に提出しなければなりません。地方裁判所に提出したとしても、不適法却下されます。

つぎに、家庭裁判所に提出するとして、どこの家庭裁判所に提出すればよいかですが、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に提出しなければなりません。

ここで「原則として」と記載したのは、全ての法定相続人が合意すれば、相手方の住所地ではない家庭裁判所を管轄裁判所とすることもできるからです(これを「合意管轄」と言います)。

とはいえ、当事者間での話し合いによる解決ができないために遺産分割調停の申立てをするわけですから、対立している相手方に対して管轄裁判所の合意書への署名捺印を求めることは簡単ではありません。

相手方が複数いて住所地が異なるときは、どの相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書を提出しても構いません(複数の管轄裁判所の中から申立人が自由に選択することができます)。

これに対し、遺産分割審判の管轄裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります(相続人全員が合意した家庭裁判所が管轄裁判所になることは、遺産分割調停と同じです)。

そのため、相手方の住所地が遠方で通うのが困難なときは、あえて被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺産分割審判を申し立て、調停に付すとしてもその家庭裁判所で遺産分割調停を行うように頼むケースもあります(これを「自庁処理」といいます)。

とはいえ、自庁処理を頼まれた裁判所としても、本来であればやる必要がなかった余分な事件を1件多く抱え込むことになりますので、通常は難色を示し、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に職権で移送しようとします。

そのような裁判所を説得するためには、弁護士を代理人に付けて、弁護士を通じて自庁処理の必要性(例えば、評価が必要な不動産が管轄内にある等)を裁判所に訴えなければなりません。

まとめ

このように、遺産分割調停や審判をどこの裁判所が管轄するかについては上記のような注意点があります。

遺産分割調停や審判についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。

 

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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