遺産相続の時効や期限- 知っておくだけで落とし穴にハマらない!
最終更新日 2024年7月6日
親族に不幸があると、葬儀の準備に始まり相続関係の各種手続きなどが必要です。
しかし、それぞれの手続には期限があることが多く、期限を過ぎないよう気を付けないといけませんね。
今回は遺産相続に関して期限のある項目を早い順に説明していきたいと思います。
生前贈与に関する贈与税の申告:翌年の2月1日から3月15日まで
故人が亡くなる前の話ですが、生前贈与は、財産をもらった人が、もらった年の翌年の2月1日から3月15日までにすることになっています。
相続放棄・限定承認:3か月以内
遺産を残された方を「被相続人」といい、お亡くなりになって相続が発生することを「相続開始」といいます。
相続が開始してから最初に期限が到来するのが「相続放棄」の手続きです。
相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出する方法により行います。
相続放棄は、遺産に借金などの負債が多い場合、または負債があるかわからない場合、事情により相続に関与したくない場合などに行います。
家庭裁判所で相続放棄が認められるとその申述人はその相続については最初から相続人ではなかったものとして扱われます。
たとえ、被相続人の債権者から借金の催促をされたとしても法的根拠をもって支払いを拒否することができます。
では、この相続放棄の期限ですが「自己のために相続があったことを知った時から3か月以内」です。
特別な事情がないケースでは、被相続人の死亡の事実を知った日から計算することになるでしょうから、あまりゆっくりはできません。
ただ、相続放棄の手続きはさほど準備が複雑なものではありませんので、迷われている場合でも戸籍を先に集めるなど着手をなるべく早く行うことで間に合わせるようにしましょう。
このほか、負債がどれほどあるかわからない時などにプラス財産の範囲内で返済する旨を申述する限定承認という手続きがありますが、この期限と起算点も相続放棄と同じです。
限定承認は相続全員で手続きをしなければならない点、内容が複雑な点から利用される件数は多くはありません。
準確定申告:4か月以内
被相続人が生前に収入があり確定申告を要する場合には、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に相続人全員が代わりに申告しなければなりません。
具体的に準確定申告を要するのは下記の場合です。
①給与所得が2000万円を超える場合
②年金が400万円を超える場合
③副収入が20万円を超える場合
相続税の申告:10か月以内
相続税の申告は遺産が基礎控除額を超える場合に必要となります。
基礎控除額とは、3000万円+(600万円×法定相続人の数)です。
この計算の基となる遺産総額の計算方法について今回は触れませんが、仮に被相続人に配偶者と子供が2人いる場合には、3000万円+(600万円×3)=4800万円となります。
すなわち、この例の場合には遺産総額からこの4800万円を控除した額に対して相続税率をかけて算出します。
基礎控除額を超える遺産相続は実はそう多いわけではありません。
超えない場合には相続税の申告と納税は不要です。
しかしながら、申告・納税を必要とする場合には被相続人の死亡日から10か月以内にしなければなりません。
相続税については時効があります。
相続税を申告・納税せずに一定の期間が過ぎると税務署は課税処分ができなくなります。
その期間は、申告期限(被相続人の死亡日から10か月)の翌日から原則5年となります。
しかし、悪意(不正や意図して申告・納税しなかった場合)はこの期間は7年となります。
時効は時効として、基礎控除額に照らして遺産がある程度ある場合にはすぐに税理士に相続するようにしましょう。
遺留分侵害額請求:1年以内
遺留分とは、兄弟姉妹が法定相続人となる場合を除いて、各相続人に与えられた最低限保証された相続分です。
ですから、例えば次男の素行が悪く一切自分の遺産を承継させないようにしても、最低限の相続分に相当する額を他の相続人に対して返還請求することができます。
この権利のことを「遺留分侵害額請求権」といいます。
返還請求するかしないかは各相続人の自由です。
ただ、無期限に返還請求ができるとすれば、他の相続人は返還請求があった時のためにお金を留保しておかなければなりません。
そこで民法第1048条では返還請求をすることの期限を次のように規定しています。
「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。
相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。
知った時から1年、知っているかいないかに関わらず10年経過するともはや返還請求ができなくなります。
遺留分侵害額請求をする場合には期限が短いので早めに弁護士に相談するようにしましょう。
不動産の相続登記:3年以内
現在のところ、被相続人の名義になっている不動産の名義を相続人の名義に変更することなく放置していても罰則規定はありません。
実際、相続人同士仲が良く相続人の人数も少ないような場合には、法務局で無料登記相談を予約してやり方を習うことによりできる場合もありますが、たいていは司法書士に依頼してすべてやってもらわないと時間がかかる場合が多いです。
司法書士に依頼すると報酬もかかりますし、申請の際に登記免許税(収入印紙代)もかかりますから、なるべくならやりたくないという気持ちになるかもしれません。
ところが、このようにして長年放置されてきた不動産は日本全国にたくさん存在し、収拾がつかなくなっています。
なぜなら、放置すると相続人はいずれ死亡し、さらにその下の世代もいずれ死亡します。
それが何世代も続くともはや今の世代の相続人に連絡をすることもままならず、不動産登記は手がつけられない状態になります。
そこで、政府がこの問題の対策を出しついに2024年4月1日より、相続登記が義務化されることになりました。
これには怠ると10万円以下の罰金が課せられます。(ちなみに、これは単にペナルティーであって罪にはなりません)
相続登記の期限は不動産の取得を知った時から3年となっています。
また、2024年以前に開始した相続についても適用されますのでなるべく早めに司法書士に相談するようにしましょう。
生命保険金の受け取り:3年以内
被相続人が生命保険の対象者になっている場合は保険会社に対して死亡保険金の受け取りの請求をしなければ保険金を受け取ることはできません。
保険法の中でこの請求期限は支払事由が発生した翌日から3年間としています。
この3年間は時効期間です。
支払事由とはこの場合は死亡した事実を指しますが、時効とは時効により利益を受ける者が相手方に時効を援用する意思表示をした時に権利が消滅します。
ですから、3年以内に請求できなかったとしても保険会社から積極性に「時効を援用しますから保険金請求はできません」と連絡がくることは稀でしょうから、あきらめないで確認してみましょう。
しかしともあれ、保険金請求は相続に関する他の手続きより期限が遅いので忘れないように請求するようにしてください。
相続回復請求権:5年以内
相続人でないにもかかわらず、あたかも相続人であるかのように振る舞う者が遺産の管理や占有をしている場合に侵害を回復するよう請求する権利を「相続回復請求権」といいます。
これに該当するケースが一般的にどれほどあるかはわかりませんが、もし侵害されているのであればこの請求権があります。
期限は民法第884条に次のように規定されています。
「相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする」
該当するような事実がある場合には弁護士に相談して回復するようにしましょう。
遺産分割:原則いつでも
民法第907条に遺産分割について次のように規定されています。
「被相続人が遺言で遺産分割を禁じた場合又は分割しない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる」特に定めがない場合には「いつでも」できます。
すなわち、遺産分割請求権に時効はありませんから、何年経っていても遺産の話し合いがなされないような場合には遺産分割を求めることができます。
ただし、生前贈与などの特別受益や寄与分は、2023年4月から施行された民法改正により、相続開始から10年を経過すると考慮できなくなるので、注意が必要です。
まとめ
今回は相続に関する期限や時効について確認しました。
法律の規定はなかなか分かりにくい部分がありますが、この内容を読んで参考にしていただけたらと思います。
また必要があれば早めに専門家に相談するようにしましょう。
最終更新日 2024年7月6日