遺産相続の手続に関する各種「時効」- 知っておくだけで落とし穴にハマらない!

遺産相続に関する【7つの時効】- 知っておくだけで落とし穴にハマらない!

親族に不幸があると、葬儀の準備に始まり相続関係の各種手続きなどが必要です。

しかし、それぞれの手続には期限があることが多く、期限を過ぎないよう気を付けないといけませんね。

今回は遺産相続に関して期限のある項目をピックアップして一つずつ説明していきたいと思います。

相続放棄の手続き

遺産を残された方を「被相続人」といい、お亡くなりになって相続が発生することを「相続開始」といいます。

相続が開始してから最初に期限が到来するのが「相続放棄」の手続きです。

相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出する方法により行います。

相続放棄は、遺産に借金などの負債が多い場合、または負債があるかわからない場合、事情により相続に関与したくない場合などに行います。

家庭裁判所で相続放棄が認められるとその申述人はその相続については最初から相続人ではなかったものとして扱われます。

たとえ、被相続人の債権者から借金の催促をされたとしても法的根拠をもって支払いを拒否することができます。

では、この相続放棄の期限ですが「自己のために相続があったことを知った時から3ヶ月以内」です。

特別な事情がないケースでは、被相続人の死亡の事実を知った日から計算することになるでしょうから、あまりゆっくりはできません。

ただ、相続放棄の手続きはさほど準備が複雑なものではありませんので、迷われている場合でも戸籍を先に集めるなど着手をなるべく早く行うことで間に合わせるようにしましょう。

相続税の申告期限

遺産相続に関する【7つの時効】- 知っておくだけで落とし穴にハマらない!2相続税の申告は遺産が基礎控除額を超える場合に必要となります。

基礎控除額とは、3000万円+(600万円×法定相続人の数)です。

この計算の基となる遺産総額の計算方法について今回は触れませんが、仮に被相続人に配偶者と子供が2人いる場合には、3000万円+(600万円×3)=4800万円となります。

すなわち、この例の場合には遺産総額からこの4800万円を控除した額に対して相続税率をかけて算出します。

基礎控除額を超える遺産相続は実はそう多いわけではありません。

超えない場合には相続税の申告と納税は不要です。

しかしながら、申告・納税を必要とする場合には被相続人の死亡日から10ヶ月以内にしなければなりません。

相続税については時効があります。

相続税を申告・納税せずに一定の期間が過ぎると税務署は課税処分ができなくなります。

その期間は、申告期限(被相続人の死亡日から10ヶ月)の翌日から原則5年となります。

しかし、悪意(不正や意図して申告・納税しなかった場合)はこの期間は7年となります。

時効は時効として、基礎控除額に照らして遺産がある程度ある場合にはすぐに税理士に相続するようにしましょう。

遺留分侵害額請求

遺留分とは、兄弟姉妹が法定相続人となる場合を除いて、各相続人に与えられた最低限保証された相続分です。

ですから、例えば次男の素行が悪く一切自分の遺産を承継させないようにしても、最低限の相続分に相当する額を他の相続人に対して返還請求することができます。

この権利のことを「遺留分侵害額請求権」といいます。

返還請求するかしないかは各相続人の自由です。

ただ、無期限に返還請求ができるとすれば、他の相続人は返還請求があった時のためにお金を留保しておかなければなりません。

そこで民法第1048条では返還請求をすることの期限を次のように規定しています。

「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。

相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。

知った時から1年、知っているかいないかに関わらず10年経過するともはや返還請求ができなくなります。

遺留分侵害額請求をする場合には期限が短いので早めに弁護士に相談するようにしましょう。

不動産の名義変更登記

遺産相続に関する【7つの時効】- 知っておくだけで落とし穴にハマらない!3現在のところ、被相続人の名義になっている不動産の名義を相続人の名義に変更することなく放置していても罰則規定はありません。

実際、相続人同士仲が良く相続人の人数も少ないような場合には、法務局で無料登記相談を予約してやり方を習うことによりできる場合もありますが、たいていは司法書士に依頼してすべてやってもらわないと時間がかかる場合が多いです。

司法書士に依頼すると報酬もかかりますし、申請の際に登記免許税(収入印紙代)もかかりますから、なるべくならやりたくないという気持ちになるかもしれません。

ところが、このようにして長年放置されてきた不動産は日本全国にたくさん存在し、収拾がつかなくなっています。

なぜなら、放置すると相続人はいずれ死亡し、さらにその下の世代もいずれ死亡します。

それが何世代も続くともはや今の世代の相続人に連絡をすることもままならず、不動産登記は手がつけられない状態になります。

そこで、政府がこの問題の対策を出しついに2024年4月1日より、相続登記が義務化されることになりました。

これには怠ると10万円以下の罰金が課せられます。(ちなみに、これは単にペナルティーであって罪にはなりません)

相続登記の期限は不動産の取得を知った時から3年となっています。

また、2024年以前に開始した相続についても適用されますのでなるべく早めに司法書士に相談するようにしましょう。

相続回復請求権

相続人でないにもかかわらず、あたかも相続人であるかのように振る舞う者が遺産の管理や占有をしている場合に侵害を回復するよう請求する権利を「相続回復請求権」といいます。

これに該当するケースが一般的にどれほどあるかはわかりませんが、もし侵害されているのであればこの請求権があります。

期限は民法第884条に次のように規定されています。

「相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする」

該当するような事実がある場合には弁護士に相談して回復するようにしましょう。

生前贈与に関する税

生前贈与を受けた場合に年間の贈与額が110万円を超えていれ相続税の申告が必要となります。

贈与した日の属する年の翌年の3月15日(贈与税の申告期限)から起算して6年となります。

上記②の場合と同様に悪意の場合は7年間に延びます。

遺産分割請求権

民法第907条に遺産分割について次のように規定されています。

「被相続人が遺言で遺産分割を禁じた場合又は分割しない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる」特に定めがない場合には「いつでも」できます。

すなわち、遺産分割請求権に時効はありませんから、何年経っていても遺産の話し合いがなされないような場合には遺産分割を求めることができます。

まとめ

今回は相続に関する期限や時効について確認しました。

法律の規定はなかなか分かりにくい部分がありますが、この内容を読んで参考にしていただけたらと思います。

また必要があれば早めに専門家に相談するようにしましょう。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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