遺産相続の手続期限はいつまで? 放っておくとどうなるの?

遺産相続の手続期限はいつまで? 放っておくとどうなるの?

遺産相続においては「何をいつまでに手続きしなければいけないか」が一律ではなくそれぞれ異なる点がややこしいのではないかと思います。

今回は期限が早く到来する順に5つの手続きに分けて解説していきます。

相続放棄・限定承認

遺産相続は不動産、預貯金、株式などの有価証券、自動車といったプラスの価値のあるものばかりではなく、被相続人が生前に清算できなかった借金などの債務も含まれるため、何もしなければ自動的に相続人が債務返済の義務を承継することになります。

プラスの財産のほうが明らかに多い場合には、普通に相続して返済しても十分財産は手に入りますが、明らかに債務のほうが多い場合や債務があるのはわかっているがどれほどあるかわからない場合は、相続人の地位から離脱したいと考えるのが自然です。

そこで民法は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」であれば相続放棄の申述をすることができる旨を規定しています。

ただし、期限内であっても相続財産を自分のために消費してしまった場合などは相続することを承認したことになり、もはや相続放棄は認められません。

自己のために相続の開始があったことを知った時とは、通常は被相続人の死亡日から計算するケースが多いと思いますが、死亡日を後日知った場合や前順位の相続人が全員相続放棄をしたために自分に順位が回ってきた時はその事情を知った時から計算することになります。

なお、負債がどれほどあるかわからない時などにプラス財産の範囲内で返済する旨を申述する限定承認という手続きがありますが、この期限と起算点も相続放棄と同じです。

限定承認は相続全員で手続きをしなければならない点、内容が複雑な点から利用される件数は多くはありません。

準確定申告

被相続人が生前に収入があり確定申告を要する場合には、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に相続人全員が代わりに申告しなければなりません。

具体的に準確定申告を要するのは下記の場合です。

①給与所得が2000万円を超える場合

②年金が400万円を超える場合

③副収入が20万円を超える場合

相続税の申告

遺産相続の手続期限はいつまで? 放っておくとどうなるの?2相続税の申告及び納税は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。

申告だけでなく納税もこの期限内にする必要があります。

納税が遅れた場合には延滞税を課せられます。

相続税は基礎控除額が他の税金よりも大きいため相続税の申告が対象とならない場合も多いですが、不安がある場合は税理士に相談し早めに準備するようにしましょう。

遺留分侵害額請求

法定相続人には「遺留分」という最低限保証された権利があります。

例えば、被相続人が遺言で特定の相続人に対して遺産を承継させる意思表示をしたため、他の相続人が受け取る遺産がなくなった場合でもそれにより遺留分が侵害されている場合には多く受け取ることになった相続人に対し遺留分相当額を返還してもらうよう請求ができます。

この遺留分侵害額請求は「相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間」以内にしなければ時効により請求できなくなります。

また、知っているかどうかにかかわらず相続開始後10年でこの請求権は消滅します。

不公平な遺産承継があり取り戻しを希望する場合は、早めに請求するようにしましょう。

生命保険金の受け取り

遺産相続の手続期限はいつまで? 放っておくとどうなるの?3被相続人が生命保険の対象者になっている場合は保険会社に対して死亡保険金の受け取りの請求をしなければ保険金を受け取ることはできません。

保険法の中でこの請求期限は支払事由が発生した翌日から3年間としています。

この3年間は時効期間です。

支払事由とはこの場合は死亡した事実を指しますが、時効とは時効により利益を受ける者が相手方に時効を援用する意思表示をした時に権利が消滅します。

ですから、3年以内に請求できなかったとしても保険会社から積極性に「時効を援用しますから保険金請求はできません」と連絡がくることは稀でしょうから、あきらめないで確認してみましょう。

しかしともあれ、保険金請求は相続に関する他の手続きより期限が遅いので忘れないように請求するようにしてください。

まとめ

家族や親族の方が亡くなると、いろいろすべきことが多く各機関への手続きもたくさん出てきます。

今回のような期限をまとめた記事を参考に必要な手続きをピックアップして期限の早く到来するものから準備していくとよいでしょう。

また、ここには記載していませんが、2024年4月1日から相続登記が義務化されます。

相続開始から3年以内の不動産登記申請が必要となり、怠ると10万以下の過料が課せられるようになります。

新しい法律の施行日以降はその運用をチェックしながら忘れないうちに準備するようにしましょう。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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