夫婦間で居住用不動産を贈与しても特別受益として持戻し計算されるのか?

 夫婦間で居住用不動産を贈与しても特別受益として持戻し計算されるのか?

最終更新日 2024年6月30日

「夫婦で住み慣れた夫名義の住宅を妻が生前贈与してもらった」

「でも、その場合、夫が亡くなると、特別受益として持ち戻し計算されてしまうの?」

そうした疑問をお持ちなのではないでしょうか?

ここでは、そうした疑問にかかわる令和元年7月1日の相続法改正についてご説明します。

特別受益とは

特別受益とは、被相続人が遺言や生前贈与などで特定の相続人に財産を譲渡することをいいます。

特別受益があった場合に、相続人間の不公平を調整することを持戻しといい第1項の中にその計算方法が明記されています。

わかりやすく説明するために下記の事例を挙げてみます。

(相続関係) 

被相続人 A

 相続人 B(妻)

     C(長男) 

     D(長女)

(A死亡時の相続財産) 

自宅の土地・建物 評価額2500万円

預貯金 1000万円

(特別受益)

3年前にCが1000万円の生前贈与遠受けた

この事例で、第1項に沿って計算していきます。

まずは、相続開始時(A死亡時)の財産に特別受益の額を足します。

2500万円+1000万円+1000万円=4500万円

このように現在は存在しない1000万円をあるものとして相続開始時の財産に加えて計算するのが持戻しです。

もう少し具体例に説明します。この4500万円を法定相続分で分けるとします。

B 4500万円×4分の2=2250万円

C 4500万円×4分の1=1125万円

D 4500万円×4分の1=1125万円

となります。ところが、このうち1000万円はすでに存在しませんから、あらかじめ受け取っているCの相続分から差し引くわけです。

B 2250万円

C  125万円

D 1125万円

このように計算すると不公平が解消されるということです。

夫婦の居住用不動産に関する新たな規定

 夫婦間で居住用不動産を贈与しても特別受益として持戻し計算されるのか?2近時、民法903条4項は、婚姻期間が20年以上で、居住用不動産を遺贈や生前贈与した場合には第3項のような意思表示がなかった場合であっても、持戻しは免除する意思表示があったものとして扱われる、と規定しました。

例えば、上記の例を相続関係は同じとして少し変えてみます。

(相続開始時に存在した財産)

預貯金 1000万円

(特別受益)

昨年Aと婚姻歴32年のBが自宅不動産(評価額2500万円)の贈与を受けた。

この事例では、持戻し計算をすると次のようになります。

相続財産総額 3500万円

B 3500万円×4分の2=1750万円

C 3500万円×4分の1=875万円

D 3500万円×4分の1=875万円

そして、特別受益を受けた分をBから差し引きます。

1750万円−2500万円=−750万円

マイナスとなりますが、第2項の規定によりゼロとなります。

次に、第4項により持戻しを免除されたとして計算して比較してみます。

財産総額は預貯金の1000万円のみですから、

B 1000万円×4分の2=500万円

C 1000万円×4分の1=250万円

D 1000万円×4分の1=250万円

となります。

もちろん、CやDにとっては不公平ですが、改正法では持戻しを免除したものとして扱われることになったのです。

法律が作られたり改正される場合には立法趣旨があります。

つまり「なぜこの法律が必要なのか」「なぜ今の法律を変更する必要があるのか」ということです。

では、この民法第903条第4項はどうして追加されたのでしょうか。

20年以上連れ添った夫婦の一方が配偶者に対して居住用の不動産を贈与するということは、配偶者の財産を豊かにするというよりも老後の生活を案じて住む場所を確保できるようにするためと考えるのが自然です。

もし、持戻しをするとなれば、配偶者はその他の財産を相続することができないか、またはかなり減少してしまうため配偶者の老後を案じて居住不動産を贈与した被相続人の想いが無駄になってしまいます。

ですから、住む場所を確保した上で他の財産の相続もできるようにしたのが第4項の趣旨です。

条文上「推定する」となっていますが、これは他の相続人が反対の証拠、すなわち「被相続人には持戻しを免除する意図などなかった」と証明した場合には覆ることを意味しています。

まとめ

 夫婦間で居住用不動産を贈与しても特別受益として持戻し計算されるのか?3今回は、特別受益があった場合の持戻し免除、特に夫婦間での居住用不動産の贈与の場合の持戻し免除について説明しました。

配偶者の立場で異議を受けたり、他の相続人の立場で異議を主張したい場合には弁護士に相談されるのがよいでしょう。

最終更新日 2024年6月30日

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学経済学部卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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