相続登記は義務?登記しないとペナルティはあるのか?
最終更新日 2024年7月6日
「相続の登記ってしなければならないの?」
「相続登記が義務になるって聞いたが・・」
そのようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ここでは、相続登記が義務なのかについて、詳しくご説明します。
登記のしくみ
不動産は、法務局で土地・建物ごとに情報が管理されています。
また、その情報を証明書にしたものを「登記事項証明書」といい、俗に「登記簿謄本」と呼ばれています。
不動産登記記録は、不動産の番号・広さ・種類・用途などの形状を記録する「表題部」と誰が所有者でどんな権利が付いているかを記録する「権利部」の2つの欄に分かれています。
表題部の登記は義務
表題部は、新たに建物が建てられた場合、1つの土地を2つの土地に分けた場合、その他形状や用途に変更があった場合には必ず所有者が登記申請をしなければなりません。
怠ると過料(罰金)を課せられることになっています。
権利部の登記は近時義務化
一方、権利部の登記は自分の権利が存在することを第三者に主張したいなら登記申請してください、というスタンスのもので、今のところ罰則規定がありません。
例えば、不動産を購入して登記申請をしない間に売主がさらに別の人に不動産を売却し、その買主が先に自分の名義の登記申請をした場合には、自分が先に購入したのだから自分が所有者であることを主張できないという意味です。
これは極端な例で二重売買は犯罪になりますから、頻繁にある話ではありませんが、通常不動産の取引では売買代金を支払ったらその日のうちに自分の名義に登記申請をします。
登記申請自体は義務ではありませんが、自分の権利を保護するためにすぐに登記申請をするのです。
この点、相続の場合は不動産の名義人が亡くなった時に相続人の権利になりますが、亡くなった日に登記申請をする人はほとんどいません。
その後の遺産分割協議(遺産の話し合い)によっては誰が不動産の名義人になるかわかりませんし、田舎の土地などは誰もが要らない場合が多いため先延ばしになってしまいます。
権利部の登記申請は、現行法ではいくら放置しても罰則規定はありませんから、そのような不動産の名義人にはなんらのお咎めもなかったのです。
そのようにして、相続があった時の相続人名義への登記申請は放置されることが多く、収拾がつかなくなった不動産が日本にはたくさん存在するようになり、その経済的な損失額が6兆円にもなると試算されました。
なぜ収拾がつかなくなるかというと、相続を放置しておくと、さらに相続人が死亡しますから、それが長い期間繰り返されていくとそもそも不動産登記名義人と現在の相続人を結びつけることすら容易ではないからです。
そうであれば、早い段階で不動産登記名義人の一世代下で登記をしておくことこそがそのような収拾のつかない不動産を生まない唯一の方法となるわけです。
そこで、ついに2024年4月1日より相続登記が義務化されることになりました。
この相続登記の義務化は広報がされており、ご存じの方もおられるのではないでしょうか?
いつまでに登記しないといけないか
2024年4月1日以降は相続登記が義務化されます。
期限は「相続の開始及び不動産の取得を知った時から3年以内」と規定されます。
相続による不動産の取得および被相続人が遺言で相続人に不動産を遺贈した場合に適用されます。
正当な理由なくこの期限内の相続登記をしない場合には10万円以下の過料(罰金)が課せられます。
もし、相続開始後、遺産分割協議がなかなか成立せずに時間を要する場合には、相続人が法務局に自分が相続人である旨の申告をすることによりこの義務を免れることができます。
ただし、後日その申告した相続人が不動産を相続することになった場合にはその時から3年以内に登記申請をしなければなりません。
法律改正以前の相続の扱い
2024年4月1日以降にこの義務が課せられることになりますが、それ以前に開始した相続については義務を免れるのでしょうか。
結論からいいますと、過去の相続に対しても適用されます。
ただ、改正時点ですでに3年を経過している場合もありますから、改正以前の相続については原則として「改正法施行後3年以内」に登記をしなければなりません。
ただし、改正日より後に不動産の取得を知った時は「知った日から3年以内」となっています。
相続人への不動産の遺贈
不動産登記法上「遺贈」と「相続」の登記申請には大きな違いがあります。
遺贈は「贈る側」と「もらう側」が共に登記申請の当事者にならなければなりません。
贈る側の被相続人は亡くなっていますから、代わりに遺言で遺言執行者が定められている場合はその人、あるいは家庭裁判所で選ばれた遺言執行者、遺言執行者がいない場合は相続人全員が関与しなければなりません。
一方、相続を原因とする登記申請はもらう人だけで登記申請ができることになっています。
したがって、被相続人が遺言で「〇〇に不動産を遺贈する」とした場合と「〇〇に不動産を相続させる」とした場合では登記申請自体の負担が違ってくることになります。
この点、法改正以降は「〇〇に不動産を遺贈する」となっている場合でも、もらう人が相続人であれば単独で登記申請できることになります。
まとめ
今回は、相続登記の義務化について解説しました。
相続登記に必要な書類は他の相続手続きに共通するものが多く、銀行などの手続きをする際に相続登記をしておくとスムーズです。
また、面倒であれば戸籍等の収集も含めて司法書士に依頼しましょう。
遺産分割がまとまらずに相続登記ができない場合には弁護士に相談するなどして早めに解決するようにしましょう。
最終更新日 2024年7月6日