配偶者短期居住権とは?どのような場合に発生するのか?配偶者居住権との違い

配偶者短期居住権とは?どのような場合に発生するのか?配偶者居住権との違い

「配偶者短期居住権って何?」

「配偶者居住権とどう違うの?」

そうした疑問をお持ちの方も多いようです。

配偶者居住権とは、遺産分割・遺言・家庭裁判所の審判により設定される被相続人の配偶者の居住する権利を保護する制度です。

存続期間を定めない場合には、原則として配偶者が生存している間は権利が存続します。

この配偶者居住権と用語の似たものに「配偶者短期居住権」という規定があります。

名前が似ているのでよくわからないといった方も多いのではないでしょうか?

配偶者短期居住権も被相続人の配偶者の住む権利を保護する点では同じですが、配偶者居住権とはどのように異なるのかを解説していきます。

配偶者短期居住権とは

配偶者短期居住権とは?どのような場合に発生するのか?配偶者居住権との違い2配偶者短期居住権は、配偶者居住権が設定されていない場合に一定期間は配偶者が住む場所を失わないようにする権利です。

配偶者居住権と異なり、要件さえあてはまれば自動的に成立する権利です。

(成立の要件)

①被相続人の配偶者であること(法律婚に限ります)

②相続開始時に被相続人が所有していた不動産に無償で居住していたこと

要件はこの2つです。

次にいつまで配偶者短期居住権が認められるかを民法の条文で確認します。

(存続期間)

民法第1037条抜粋

①居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日

→「遺産分割で相続財産を分割する場合に、配偶者が居住していた建物の所有権を承継する相続人が決定した日」または「相続開始の日」のどちらか遅い方の日からスタートとして計算し、6か月経過後の日まで

②前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日

→①以外の場合に、建物の所有者が配偶者短期居住権の消滅請求をした場合には、その請求の日をスタートとして計算し、6か月経過後の日まで

このように起算点はケースにより異なりますが、6か月が存続期間となります。

どのような場合にこの配偶者短期居住権は役に立つのかを説明しますと、例えば遺産分割で息子が建物を相続したことになり、自分はその家を出て新しくワンルームを借りようと思っているような場合に、次の居住場所が決まるまではこの配偶者短期居住権を利用して、暫定的に住み続けることができます。

配偶者居住権と配偶者短期居住権の違い

配偶者短期居住権とは?どのような場合に発生するのか?配偶者居住権との違い3ここからは、配偶者居住権と配偶者短期居住権の違いを一つずつピックアップして説明していきます。

①設定方法・成立要件

これはすでに触れましたが、配偶者居住権は遺言・遺産分割協議・審判により設定されるのに対して、配偶者短期居住権はその成立に行為を必要とせず、被相続人と法律婚であった配偶者で、相続開始時に無償で被相続人所有の建物に居住していた事実のみで成立します。

法律婚とは、戸籍上の夫婦であった時いうことで、事実婚(内縁の配偶者)には認められません。

②存続期間

配偶者居住権は、特に存続期間を定めていない場合には配偶者の生存中は権利が存続しますが、配偶者短期居住権は上述のとおり、起算点はいくつかあれど6か月間です。

③権利の対象 

配偶者居住権は、建物すべてに権利が及ぶのに対して、配偶者短期居住権は居住用の部分に関してのみ権利が及びます。

④不動産登記

配偶者居住権は、その権利を有することを不動産登記をすることで主張できますが、配偶者短期居住権は登記制度の適用はありません。

⑤相続税

配偶者居住権は、財産価値として評価され、相続税の対象となりますが、配偶者短期居住権は財産価値として評価はなく相続税の対象とはなりません。

配偶者短期居住権が想定される場面

先ほど少し触れましたが、配偶者短期居住権は、遺産分割協議で相続財産となっている不動産を配偶者以外の相続人が取得する場合に、配偶者がその不動産から退去する間の暫定的な権利として使われます。

また、配偶者居住権は、遺言のほか遺産分割協議や家庭裁判所の審判で設定されますが、権利が設定されるまでは結果がどうなるにしてもその間の配偶者が住むべき場所を確保する必要がありますから、この場面においても配偶者短期居住権が利用できます。

まとめ

今回は、配偶者居住権と配偶者短期居住権の違いを中心にみてきました。

用語は似ているものの、配偶者居住権が財産価値のある原則として終身継続する権利であるのに対し、配偶者短期居住権は短期間の暫定的な権利です。

違いをご理解いただき、想定される場面でご利用ください。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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