遺言書に検認は必要なのか?検認手続きの流れとよくある疑問まとめ
最終更新日 2024年6月30日
両親や親族といった被相続人が生前に財産分与などについて記載した遺言書には、どのような効力があるのでしょうか。
正しい効力を知っておかなければ、複数の相続人との間でトラブルに発展することもあります。
本記事では、遺言書に検認は必要なのか、検認手続きの流れとよくある疑問についてご説明します。
遺言書の検認とは
遺言書の検認とは家庭裁判所の手続きを通して、相続人全員に遺言書の存在を知らせ、その形状や内容を保存するための手続きのことを指します。
ただし、この検認手続きは遺言書の有効性を証明するものではありません。
理解が難しい手続きであるため、順を追って解説いたします。
検認が必要な遺言書の種類
検認が必要な遺言書は「自筆証書遺言」に限られ、公正証書遺言は検認を要しません。
また、自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度が令和2年7月10日からスタートしており、この制度を利用している自筆証書遺言についても検認は不要です。
参考:自筆証書遺言保管制度
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
なぜ検認が必要なのか
検認が必要な理由は、相続が開始して各機関で相続手続きをする際に、自筆証書遺言は検認を経たものでなければ遺言書に基づく名義変更等の手続きができないためです。
具体的には、家庭裁判所にて自筆証書遺言に「検認済証明書」が合綴され、検認手続きを経た自筆証書遺言として手続きに使用することができるようになります。
公正証書遺言や法務局で保管された自筆証書遺言には原本そのものが保管されているため、そこには相続人の誰かが遺言書に手を加えることはできません。
しかし、自宅で保管されていた自筆証書遺言の場合には変造・偽造がされていないものであることを証明しなければ、トラブルの基となる可能性があるため、検認済であることを求められます。
検認手続きの流れ
こちらでは、検認手続きの流れについてご説明します。
1. 申し立て
遺言書を発見した相続人や保管していた相続人から「遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」に申し立てます。
申し立てに必要な書類は次のものです。
- 検認申立書
- 遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
申し立て時には800円分収入印紙を申立書に貼付します。
その他、裁判所が指定した郵便切手を提出します。
2. 検認期日(検認日時)の通知
家庭裁判所から各相続人に、検認日時の通知があります。
3. 検認期日
指定された日時に検認が行われます。
出席した相続人の立ち会いのもと遺言書が開封され、遺言書の中身を確認します。
4. 検認済証明書の申請
検認済証明書の申請し、遺言書に合綴してもらいます。
この状態になると、各相続手続きに使用することができるようになります。
検認済証明書の申請には、収入印紙150円分が必要です。
検認に関するよくある疑問
こちらでは、検認に関するよくある疑問をご紹介します。
検認=有効ということ?
先述のとおり、検認は遺言書自体が法的に有効なものであることを証明する手続きではありません。
つまり検認手続きを経た自筆証書遺言であっても、後に認知症の状態で書かれた遺言であることが主張され、無効となることもあります。
また、法律に則していない自筆証書遺言であればその有効性が争われる余地はあります。
検認は検認時点での遺言書の状態を保存するものであるため、法律的な有効性は担保されません。
検認期日に出席しないと不利になる?
検認手続きの申立人以外の相続人は、必ずしも検認期日に出席する必要はありません。
また、検認手続きは遺言書の状態を確認する際には事務手続きであるため、欠席したことによる不利益もありません。
検認しなかったらどうなる?
検認は、民法で義務付けられており、検認手続きを経ずに遺言書を開封したり、手続きを進めると5万円以下の過料が発生したりすることがあります。
参考:民法第1004条
- 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。
- 遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
- 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
民法第1005条
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。
おわりに
本記事では、自筆証書遺言の検認手続きについて説明してきました。
自筆証書遺言はとても作成するのに楽な方式ですが、その有効性が争われる余地があり、また検認手続きを要することから、あまりおすすめできる方式ではありません。
遺言書の作成を検討されている場合には、公正証書遺言で作成するのがベストです。作成の際はぜひ一度ご相談ください。
最終更新日 2024年6月30日