特定財産承継遺言とは?遺贈との違いは?登記方法は?

特定財産承継遺言とは?遺贈との違いは?登記方法は?

「特定の相続財産を特定の相続人に相続させたいけど、どうしたらよいのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、特定財産承継遺言とはどのようなものかについて、遺贈との違いや登記方法にもふれつつ解説します。

特定財産承継遺言とは

特定財産承継遺言とは?遺贈との違いは?登記方法は?特定財産承継遺言とは、「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言」(民法1014条2項)のことです。

具体的には、「別紙目録記載1の土地は、長男Aに相続させる。」と遺言書に記載すると、特定財産承継遺言(特定の相続財産である本件土地を特定の相続人であるAに相続させる旨の遺言)をしたことになります。

「相続させる」旨の遺言と遺贈との違い

遺言者が遺言によって特定の遺産の所有権を移転する場合、第三者に対しては遺贈だけしか選択することができませんが、相続人に対しては遺贈のほかに「相続させる」旨の遺言を選択することができます。

とはいえ、実務では、相続人に相続させる場合に遺贈を選択することはなく、必ず「相続させる」旨の遺言が選択されます。

その理由としては、「相続させる」旨の遺言のほうが登録免許税が安くなり(現在は同じ金額です)、他の相続人と共同申請せずに済むからです(2023年4月1日からは相続人に対する遺贈でも単独申請が可能になります)。

また、遺産が農地のとき、遺贈では知事の許可が必要になるとか、遺産が賃借権のとき、遺贈では賃貸人の承諾が必要になるといったデメリットもあります。

「相続させる」旨の遺言の効果

特定財産承継遺言とは?遺贈との違いは?登記方法は?3「相続させる」旨の遺言は、公証人が公正証書遺言を作成する場合における実務上の工夫です。

しかし、民法では遺贈の規定しかなかったことから、裁判所において「相続させる」旨の遺言の効力をどのように解釈するかが長年に渡って争われてきました(公証実務では「相続させる」旨の遺言は被相続人の死後、直ちに登記する方法として考えられているのに対し、裁判実務では遺産分割が終了するまでは登記できないとする裁判例のほうが多く(その代表格は東京高等裁判所昭和45年3月30日判決です)、長らく公証実務と裁判実務とが対立する混乱状態にありました。

しかし、最高裁判所平成3年4月19日は、「相続させる」旨の遺言についての判断を初めて示し、公証実務の考えを支持しました。

該当部分を引用します。

「遺言書において特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言者の意思が表明されている場合、当該相続人も当該遺産を他の共同相続人と共にではあるが当然相続する地位にあることにかんがみれば、遺言者 の意思は、右の各般の事情を配慮して、当該遺産を当該相続人をして、他の共同相続人と共にではなくして、単独で相続させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な意思解釈というべきであり、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺贈と解すべきではない。そして、右の「相続させる」趣旨の遺言、すなわち、特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させようとする遺言は、前記の各般の事情を配慮しての被相続人の意思として当然あり得る合理的な遺産の分割の方法を定めるものであって、民法908条において被相続人が遺言で遺産の分割の方法を定めることができるとしているのも、遺産の分割の方法として、このような特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させることをも遺言で定めることを可能にするために外ならない。したがって、右の「相続させる」趣旨の遺言は、正に同条にいう 遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の 意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。そしてその場合、遺産分割の協議又は審判においては、当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても、当該遺産については、右の協議又は審判を経る余地はないものというべきである。」

結論のみしか述べないことがほとんどである最高裁判決にしては珍しく長文の理由付けがなされているのは、従来の裁判実務を否定し、公証実務のほうを支持することになったからだと思われます。

この判決によれば、特定財産承継遺言、すなわち特定の相続財産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言をすると、被相続人の死亡時に直ちにその相続人の所有物になり、遺産分割の対象からは外れることになります。

そして、前述したとおり、「相続させる」旨の遺言によって遺産を取得した相続人は、他の相続人に協力を求めることなく、単独で登記申請(被相続人名義から自分名義への所有権移転登記手続)をすることができます。

まとめ

このように、特定財産承継遺言をすると、遺言者の望みどおりに特定の遺産を特定の相続人に相続させることができます。

遺言についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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