遺産分割における不動産の評価はどうすればよいのか?

遺産分割における不動産の評価はどうすればよいのか?

「遺産分割をする際、不動産の評価はどうすればよいのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、不動産をどのように評価すればよいのかについて解説します。

原則として不動産の評価が必要

遺産分割とは、遺産総額にそれぞれの相続人の具体的な相続分率を掛け算して行います。

その際は遺産総額を正確に算出しなければならず、そのためには遺産不動産を的確に金銭評価する必要があることから、原則として遺産不動産を評価しなければならないことになります(ここで「原則として」と記載したのは、法定相続分による共有取得をしたり、遺産分割手続の中で売却してその売却代金を法定相続分に応じて分けたりするのであれば、遺産不動産を評価する必要はないからです)。

不動産を評価する方法とは

遺産分割における不動産の評価はどうすればよいのか?2遺産不動産を評価する方法は、原則として鑑定によります。

しかし、鑑定を行うためには多額の費用(数十万円から百万円を超えるときもあり)が掛かるため、家庭裁判所の実務では、相続人全員が鑑定以外の方法で遺産不動産を評価することを合意したときは、相続人が合意した評価方法が不合理・不相当なものでない限り、相続人が合意した評価方法に基づいて調停や審判を行っています(実務でこのような運用がなされている理由は、遺産分割事件が当事者の任意処分を許す財産紛争事件であり、当事者の意思を最大限尊重すべきであるという価値判断があるからです)。

遺産不動産を評価する鑑定以外の方法としてよく提出されるものは、当事者が知り合いの不動産業者に依頼して作成した査定書です。

この査定書には、遺産不動産の近隣不動産の過去数年間の売買実績や固定資産評価額、路線価等を踏まえ、その不動産業者が相当と考える遺産不動産の時価(その金額で売却すれば買い手が見つかるであろうと思われる金額)が記載されるのが通常です。

遺産分割調停において、全ての相続人は、調停を申し立てた側の相続人(これを「申立人」といいます)と調停を申し立てられた側の相続人(これを「相手方」といいます)のどちらかの陣営に属します。

不動産業者の査定書によって遺産不動産を評価するときは、通常は、申立人と相手方の双方から別々の査定書が提出されます。

そして、双方が提出した査定書を前提にして相続人全員で話し合い、遺産不動産の評価額をいくらにするかについての合意が形成できればその金額を遺産不動産の評価額としますが、合意が形成できなければお金を出して鑑定をしなければなりません。

なお、東京家庭裁判所家事部には不動産鑑定士の資格をもつ調停委員がいますが、これは大規模庁である東京家庭裁判所だからこそであり、普通の地方の家庭裁判所にはそのような専門的な知見をもつ調停委員はいません。

そして、東京家庭裁判所家事部においても、不動産鑑定士の資格をもつ調停委員を無制限に関与させて鑑定を回避しているわけではありません。

東京家庭裁判所家事部が不動産鑑定士の資格をもつ調停委員を関与させる場合は、当該調停委員に過大な負担を与えないようにするため、価格についての紛争性が高くなく、不動産鑑定士の資格をもつ調停委員の意見を尊重して鑑定を行わない旨の相続人全員の合意があり、対象物件の数が多くない等の場合に限定されています。

鑑定の費用

遺産分割における不動産の評価はどうすればよいのか?3裁判所が不動産鑑定を行うときは、鑑定合戦(裁判所の鑑定後に当事者が私的鑑定書を提出し、裁判所の鑑定結果を覆そうとする行為)を予防するため、当事者双方に対して私的鑑定書を提出する意思があるかどうかを確認し、その意思がある当事者にはあらかじめ提出させ、裁判所の鑑定は当事者が提出した私的鑑定書を踏まえた最終的なものとして行うことが通常です。

裁判所が鑑定を行う際は、裁判所がもつ候補者名簿から鑑定人を選任することになりますが、裁判所は、候補者に報酬の予定額の見積書を事前に提出させ、その見積額を踏まえて予納金を決定し、法定相続分に応じて相続人全員に負担させるか、難色を示す相続人がいるときは鑑定を求める当事者に負担させてから鑑定を実施するという運用をしています。

裁判所は、当事者が事前に予納金を全額支払わない限り鑑定を実施することはありませんので、鑑定を希望する相続人と希望しない相続人(鑑定を希望しないので予納金の支払についても拒否している状態)がいるときは、鑑定を希望する相続人が鑑定を希望しない相続人の分まで負担することになります。

当事者が支払った予納金は、審判に至れば審判の主文で負担割合が定められますが、審判に至らなければ現実的には予納した当事者が負担することになります。

予納金がいくらになるかは、不動産の価格や件数等にもよりますが、数十万円になることも珍しくなく、百万円を超えるときもあります。

そのため、裁判所としては、当事者双方に不動産業者の査定書を提出させ、これらの査定額が不合理・不相当なものでなければ、その中間額を評価額とする合意が形成できないかというような説得を試みますが、最終的に合意が形成できないときは、当事者が予納金を負担して鑑定を実施するしかありません。

まとめ

このように、遺産不動産の評価には上記のような注意点があります。

遺産分割についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

>

お気軽にお問い合わせください。



遺産相続の悩みはしんどいものです。

当事務所は姫路で家族問題に注力して10年以上。

一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

秘密は厳守します。


TEL:0120-500-255