遺骨や仏壇、位牌、お墓の相続はどうなるか?

遺骨や仏壇、位牌、お墓の相続はどうなるか?

「遺骨、仏壇、位牌、お墓は誰が承継することになるのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、遺骨、仏壇、位牌、お墓の承継について解説します。

祭祀財産とは

遺骨や仏壇、位牌、お墓の相続はどうなるか?2祭祀財産は、相続財産とは別の概念になります。祭祀財産とは、具体的には①系譜、②祭具、③墳墓の3種類のものを指します。

系譜とは、家系を表示するもののことです。

祭具とは、祖先の祭祀の用に供するもののことであり、具体的には、位牌、仏壇などのことです。

墳墓とは、遺体や遺骨を葬っている設備のことであり、具体的には、墓石、墓碑、埋棺などのことです。

仏壇や位牌は祭具、お墓は墳墓に分類され、いずれも祭祀財産の一部となります。

これらに対し、遺骨は、系譜、祭具、墳墓のいずれでもありませんので、祭祀財産ではありませんし、もちろん相続財産でもありません。

遺骨は、祭祀財産でも相続財産でもないものということになります。

祭祀財産や遺骨は相続財産ではないことから遺産分割の対象にはなりませんが(遺産分割の対象になるものは相続財産だけです)、これらを誰がどのように管理するかについて、遺産分割に付随して問題になります。

祭祀財産の承継者

祭祀財産は、祖先の祭祀を主宰すべき者に承継されます。

祭祀財産は相続財産には含まれませんので、誰が祭祀財産を承継するかについては相続とは別の基準で判断されることになります。

民法897条は、祭祀財産の承継者について、①被相続人の指定、②慣習、③裁判所の指定の順序で定めるべき旨を規定しています。

ここで被相続人が祭祀財産の承継者を指定する方法については、被相続人の指定の意思が外部から推認されるものであればどのような方法によるものでも構いません。

具体的には、口頭によるものであっても書面によるものであってもよく、明示的なものであっても黙示的なものであってもよく、生前になされたものであっても遺言によるものであってもよいものとされています。

このように民法の規定によれば、被相続人の指定が存在するのであれば指定された者が祭祀財産の承継者となるわけですが、被相続人の指定が存在しないときは慣習により、被相続人の指定も慣習も存在しないときは家庭裁判所の指定によって祭祀財産の承継者を定めることになります。

もっとも、民法はこのように規定するものの、慣習によって祭祀財産の承継者を定めた裁判例はないと言われています。

というのは、戦前の家制度的な価値観を前提とする慣習を戦後の新民法のもとで認めるわけにはいかなかったからです。

そのため、祭祀財産の承継者について被相続人の指定がないときは、実務上は慣習によることなく裁判所が指定することになります。

裁判所がどのような基準によって祭祀財産の承継者を判断するのかについて、最高裁判所の判例はまだありません。

しかし、最高裁判所の判例に次ぐ権威があると考えられている東京高等裁判所の裁判例が存在します。

東京高等裁判所平成18年4月19日決定は、「承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係、承継候補者と祭具等との間の場所的関係、祭具等の取得の目的や管理等の経緯、承継候補者の祭祀主宰の意思や能力、その他一切の事情(例えば利害関係人全員の生活状況及び意見等)を総合して判断すべきであるが、祖先の祭祀は今日もはや義務ではなく、死者に対する慕情、愛情、感謝の気持ちといった心情により行われるものであるから、被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって、被相続人に対し上記のような心情を最も強く持ち、他方、被相続人からみれば、同人が生存していたのであれば、おそらく指定したであろう者をその承継者と定めるのが相当である」と判断しており、実務における指針になっているものと思われます。

遺骨の承継者

遺骨や仏壇、位牌、お墓の相続はどうなるか?3遺骨を誰が承継するかが争いになることがあります。

この点について、そもそも遺体や遺骨が所有権の対象になるかどうかについて争いがあります。

この点について、第三者による侵害行為から遺体や遺骨を法的に保護する必要性があることや引渡請求の対象となり得ることから、埋葬・祭祀・供養等の目的に限定した所有権を認めるのが大審院からの判例です。

つぎに、遺体や遺骨について所有権の対象になることを認めるとして、誰が遺体や遺骨の所有者となるのかについて争いがあります。

この点について、最高裁判所平成元年7月18日は、遺骨は祭祀を主宰すべきものと認められる相続人に帰属すると判断し、祭祀主宰者による遺骨の引渡請求を肯定した原審の判断を是認しています。

したがって、遺体や遺骨は、相続財産でも祭祀財産でもありませんが、祭祀承継者が埋葬・祭祀・供養等の目的に限定した所有権を取得することになり、遺体や遺骨を占有する第三者に対する引渡請求をすることもできることになります。

まとめ

このように、遺骨、仏壇、位牌、お墓は相続財産ではありません。

これらを誰が承継するかについては、祭祀財産の承継者を定める基準に従って判断されることになります。

遺骨、仏壇、位牌、お墓の承継についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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