特別受益とは?どのようなものが特別受益になるのか?遺産分割においてどう扱われるのか?

「特別受益って何?」

「どのようなものが特別受益になるの?」

そのような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

相続財産の総額を計算する上で、亡くなられた人(被相続人)の死亡時点に存在する財産のすべてを遺産総額とするのが基本的なイメージだと思います。

ところが、極端な例でいえば被相続人が死の少し前に大きな財産を特定の相続人に贈与していた場合には、他の相続人からしてみると「あの財産が今あれば遺産総額は変わってたよね」と主張したくなるでしょう。

民法にはこのような不公平な状態を調整するための規定がいくつかありますが、その中で「特別受益の持ち戻し」という規定があります。

今回は特別受益について詳しく解説していきます。

特別受益とは

特別受益とは?どのようなものが特別受益になるのか?遺産分割においてどう扱われるのか?2特別受益とは、相続人が被相続人の生前にその財産を受け取った場合に「相続財産の前受け」と考えられるものをいいます。

つまり、その行為があったために他の相続人が承継できる財産が減少したというケースです。

では、どのようなものが特別受益とみなされるのでしょうか。

・生前贈与

・遺贈 

・その他の資金援助など

資金の援助といっても学費・結婚資金・生活費の援助・住宅購入資金などさまざまなものがありますが、そのすべてが特別受益にあたるわけではありません。

親には子供を扶養する義務がありますから、扶養の範囲内と評価されるものについては特別受益にはあたりません。

過去の裁判例では、結婚における持参金や支度金は特別受益にあたるが結納金や挙式費用は特別受益にあたらないとするもの、医学部などの高額な大学の学費は特別受益にあたるが通常の高校・大学の学費は扶養の範囲内とするものなどがあります。

特別受益の持ち戻しとは

この特別受益を受けた相続人と他の相続人との不公平を調整するのが「特別受益の持ち戻し」です。

わかりやすい例を挙げて説明します。

(相続関係)

被相続人 A

相続人  B(妻)

     C(長男)

     D(長女)

(相続開始時に存在した財産総額)

3000万円

(特別受益)

5年前にAがCに対し住宅購入資金として援助した500万円

このケースでは、特別受益を考慮せずに法律で定められた相続分割合(法定相続分割合)により財産を分けた場合、5年前にされた贈与の500万円は存在しませんから3000万円をベースに計算することになります。

法定相続分割合は、B2分の1(4分の2)、C4分の1、D4分の1ですから、それぞれB1500万円、C750万円、D750万円を相続します。

特別受益を考慮すると、まず相続開始時に存在した財産にAからBに贈与された500万円を足します。

→3000万円+500万円=3500万円

500万円は実際には存在しませんが、いったんあるものとして計算に入れます。

次に、同じく法定相続分割合で割ります。

B1750万円、C875万円、D875万円になりますが、実際には500万円分は存在しませんから、特別受益を受けたCの相続分から引きます。

875万円−500万円=375万円

つまり、特別受益を考慮した相続分は、

B1750万円

C375万円

D875万円

となります。この計算を「持ち戻し計算」といいます。

仮に、このケースで特別受益の額がもっと大きくCの相続分から引くとマイナスになってしまう場合でも、Cは自分の財産からマイナス分を補填する必要まではありません。

その場合には単にCが受ける相続分がゼロになります。

さらに、この持ち戻し計算は被相続人が遺言で免除した場合にはすることを要せず、特別受益を考慮せずに相続開始時に存在する財産をベースとして計算します。

ただし、特別受益があれば遺言で免除した場合を除いて必ず考慮しなければならないわけではなく、遺産分割協議で他の相続人が持ち戻し計算を不要とするのであればどのように遺産を分割してもかまいません。

法改正のポイントは

特別受益とは?どのようなものが特別受益になるのか?遺産分割においてどう扱われるのか?3令和元年7月1日に民法が改正されました。

その改正の中で特別受益に関する改正が2点ありました。

①特別受益にあたる時期

改正以前は特別受益にあたる生前贈与などの時期については制限がなくすべての贈与などが対象となっていましたが、法改正により原則として被相続人の死亡の10年前にされたものまでに制限されました。

②配偶者に対する持ち戻しの免除

持ち戻しの免除は、被相続人が遺言によって持ち戻しを免除した場合に限られていましたが、改正後は次の要件にあてはまる贈与は被相続人が持ち戻しを免除したものと推定するものとする規定が新設されました。

「結婚20年以上の夫婦であること」

「居住用不動産または敷地の贈与(遺贈)」

この要件にあてはまるばあいには、実際には被相続人が持ち戻しを免除する意思表示をしたもの推定する、としています。

なみに、「推定する」というのは、争いになったときに反対の証拠をあげれば覆ることにはなります。

つまり、他の相続人から「被相続人は持ち戻しの意思などなかった」という証拠が示された場合には覆ることを意味しています。

まとめ

今回は、特別受益について解説しました。

本文でも触れましたが、遺産分割においては特別受益を考慮するかどうかは相続人全員の話し合いによりますので、必ずしも考慮しなければならないということではありません。

ただ、話し合いがまとまらず、特別受益についても揉めているようなケースでは弁護士に相談しながら進めるのがよいでしょう。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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