相続放棄をしても生命保険はもらえる? 受け取る条件と注意点を解説

最終更新日 2024年7月6日
相続放棄をしても生命保険はもらえるのでしょうか?
相続放棄は「最初から相続人とならなかった」ものとして扱うための制度です。
借金などのマイナス財産が多い場合やそもそも相続関係に関与したくない人がいる場合にまで無条件で被相続人の権利義務を承継させることは不条理ですから、プラスの財産も含め一切承継しないとする申述を家庭裁判所にすることができます。
プラスの財産は受け取って、マイナスは放棄するという虫のよい話はもちろん許されませんし、すでに相続人としての行為をした後で「やっぱり相続放棄する」ということも許されません。
ところが、生命保険金の受領に関しては、原則として相続放棄した人も受け取ることができます。
この問題に直面されている方も多いことでしょう。
今回は、この法律上の扱いについて解説していくことにします。
生命保険の受取人
まず、生命保険契約では「契約者」「被保険者(保険対象者)」「指定受取人」の3者が登場します。
契約者と被保険者(保険対象者)は同一人物であることも多いかと思います。
例えば、自分に生命保険を掛ける契約をする場合です。
さらに保険契約には「指定受取人」という記載欄があります。
この指定受取人欄には被保険者(保険対象者)に保険金支払いの事由が発生した場合に保険金を受け取るべき人を記載します。
例えば、上の例では自分に生命保険を掛け、自分が死亡した場合に奥さんが受け取れるようにするようなケースです。
この場合のお金の流れとしては、契約者が掛金を支払い、死亡と同時に保険会社から指定受取人に対して保険金の支払い義務が発生して、請求すると保険会社から指定受取人に直接に支払われます。
この保険金の扱いは、指定受取人が「固有の財産として受け取れる」というのが法律上の扱いです。
すなわち、掛け金は被相続人自身が支払っていたとしても、生命保険金は保険会社から一旦被相続人に支払われるわけではなく、直接に指定受取人が自分の財産として受け取るわけです。
ですから、被相続人の財産を経由しませんから相続財産には含まれないということになります。
相続財産に含まれないということは遺産分割協議の対象にもなりません。
このことから、相続放棄をした場合でも相続財産と関係ない生命保険金については受け取れることになります。
生命保険金が相続財産になる場合
上述したように原則として生命保険金は相続財産になりませんが、保険契約者及び被保険者が被相続人であり指定受取人が指定されていなかった場合にはどうでしょうか。
この場合の生命保険金は相続財産になるものとされています。
また、指定受取人が被相続人自身となっている場合にも相続財産とみなされます。
生命保険金の税金
生命保険金は、指定受取人が誰になっているかにより相続財産か否かの結論が変わることになりますが、生命保険金を受け取った場合の税金については以下の区分で判断されます。
(ケース①)
「被保険者」A
「保険料を支払った人」A
「受取人」B
→相続税の対象として扱われます。
(ケース②)
「被保険者」A
「保険料を支払った人」B
「受取人」B
→所得税の対象として扱われます。
(ケース③)
「被保険者」A
「保険料を支払った人」B
「受取人」C
→贈与税の対象として扱われます。
税金面では上記いずれかで判断されます。
例えば、ケース①でBが相続放棄をして生命保険金を受け取る場合には相続財産とはならず問題なく受け取ることができますが、税金面では相続税の対象となるということです。
税金面でより詳しく知りたい場合は税理士に相談するのも一考です。
生命保険金の活用
生命保険金が原則として相続財産に含まれないということは、原則として遺留分の対象ともならないわけですから、相続財産の承継とは切り離して考えることができ、特に財産を残したい人がいる場合には生命保険金をうまく活用して財産を残すことが可能となります。
まとめ
今回は相続放棄した場合の生命保険金の受け取りについて解説しました。
原則としては、生命保険金は相続財産にはなりませんが、ご自身が契約されている保険について契約上の受取人が誰になっているかわからない場合は一度確認してみてください。
変更したい場合には保険会社に変更の申請を行いましょう。
最終更新日 2024年7月6日