父親が再婚しているときの遺産相続|再婚相手と実子の相続割合は?

厚生労働省の調査によると夫婦の離婚率は2000年ごろをピークとして減少傾向にあります。
離婚してその後再婚した場合にはそれぞれの婚姻時に子を持つと半血兄弟姉妹の関係が生まれます。
異母兄弟姉妹や異父兄弟姉妹です。離婚率は2000年ごろがピークであるため、その頃に離婚再婚をした夫婦の子どもはそろそろ成人に達する頃になっています。
半血兄弟姉妹で問題になるのは遺産相続です。
一般的に同じ両親を持つ兄弟姉妹と比べて半血兄弟姉妹の場合、遺産相続の際に話し合いで解決しにくい関係性といえます。
今回は、再婚にからむ遺産相続について解説します。
父親の再婚相手と実子の相続割合
父親が妻と離婚(または死別)してその後に再婚した場合に、父親が亡くなった場合の遺産相続関係についてみていきます。
相続人が再婚相手と実子のみの場合
再婚相手との間に子どもが生まれた場合には、その子どもは再婚の婚姻関係における実子であるため、法定相続分は再婚相手が1/2、子どもが1/2となります。
前妻は離婚によって相続関係から離脱しますので、相続関係には影響ありません。
前妻の子がいる場合
父親が再婚した相手と父親の前婚の際の実子との関係は他人となります。
父親の再婚相手と子どもが養子縁組をすることで、父親の再婚と実子との間に血縁関係が生じることになります。
この場合の血縁関係は生物学的な血縁関係ではありませんが、法律上は再婚相手とも実子(母子)と同様の関係になります。
(民法第727条)
ただし、父親の遺産相続に関しては養子縁組の有無は相続分に影響がありません。
被相続人に配偶者と子どもがいる場合の法定相続分は、配偶者が1/2・子どもが1/2です。
(民法第900条1号)
養子縁組をした場合には、再婚相手が死亡した場合の相続について父親の実子も相続人になります。
再婚相手に連れ子がいる場合
父親の再婚相手にも子どもがいる場合は、父親の実子と再婚相手の実子は兄弟姉妹となるでしょうか。
この場合も前述のケースと同様に再婚相手と父親の実子、父親と再婚相手の実子それぞれが養子縁組をすることによりはじめて血縁関係が生じます。
同時に子ども同士にも兄弟姉妹の関係が生まれます。
養子縁組をした場合には、通常の父母・子どもの相続関係となるため、再婚相手(母)1/2、子ども1/2の割合で父親の遺産を相続することになります。
そして、子どもはその人数の頭割りで1/2を分割します。
養子縁組をしていない場合には、父親の相続に関しては、再婚相手の子どもは他人であるため相続人にはならず、再婚相手1/2、父親の実子1/2の割合で相続することになります。
父親の再婚によって起きる相続トラブル事例
前述のとおり、再婚相手と父親の実子の間に相続関係が生じるわけですが、たとえ養子縁組をしたとしても元は他人であるため、確執を持った関係性になることもあるでしょう。
また、父親が再婚することによって自分の相続分が半分になるため、父親の実子としては良い感情を抱かないことが考えられます。
養子縁組をしていない関係であれば法律上も他人と遺産を分け合うことになるため、紛争が生じることもあるでしょう。
法定相続分とは異なった割合により遺産を分割するには、相続人全員の話し合いにより合意することにより可能です。
(民法第907条)
しかし、確執がある状態では話し合いで合意することが難しく、家庭裁判所の手続きにより分割方法を定めることになります。
この場合は、いきなり訴訟になるわけではなく「家事調停」を行います。
調停は、調停委員という調整役の人を介して直接相続人が顔を合わせることなくそれぞれの言い分や希望を聞いて、分割方法をまとめていきます。
調停を利用すると時間もかかりますし、弁護士に代理を依頼すると費用もかかります。
父親の再婚による相続トラブルを防ぐには
生物学的な血縁関係があっても遺産相続において、紛争に発展するケースは多くあります。
そのため、再婚にともなう遺産相続のトラブルは発生しやすいといえるかもしれません。
このようなトラブルを防ぐためには、父親の意志が強く反映させられる方法を選択して対策を講じる必要があります。
その代表的なものは、遺言書を作成する方法です。
ただ、再婚相手にも実子にも遺留分といって最低限の相続分を請求していける制度があるため、どちらを優遇したい場合でも最低限遺留分相当額は残す内容の遺言書にすると良いです。
また、生命保険は契約者が受取人を決めることができ、生命保険金は相続財産とは切り離して保険対象者の死亡時に受取人固有財産となります。
この保険金をうまく利用して優遇したい人を受取人として契約しておくことも一つの対策方法となります。
おわりに
ご自身が再婚される場合には、将来かならず発生する相続時に残された配偶者と子どもがなるべく争わないような対策を生前から検討しておく必要があります。
人にはかならず死が訪れ、またその時期がわからないため、なるべく元気なうちに考えておくことをおすすめします。
対策には法律知識を要するため、一度専門家にご相談されるのが良いでしょう。