介護による寄与分とは?認められる条件と必要な証拠について解説
親を亡くなるまで介護したので寄与分が認められるのではないか?
寄与分が認められるとしたら、どのような場合か?
寄与分をどのように証明したらいいのか?
こうしたお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、介護による寄与分と認められるための条件、必要な証拠についてご説明します。
寄与分とは
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をしてきた相続人の相続分を増やす制度のことをいいます(民法904条の2)。
寄与分は、特別の寄与を要件とするため、単によく気にかけていた程度の世話では寄与分は認められません。
寄与行為には、家事従事型、金銭等出資型、療養監護型、扶養型、財産管理型など様々な態様があると言われていますが、
よく問題になるのは、療養監護型、つまり、介護による寄与分です。
介護による寄与分とは?
「被相続人の療養看護」とは、高齢で身体が不自由になった親の介護などが代表例です。
介護は自己の生活を犠牲にして尽くすことになるため、かなりの時間と労力が必要となります。
そのため、寄与分は認められてしかるべきとも思いますが、すべてのケースにおいて、というわけにはいきません。
介護による寄与分が認められる条件
相続人には、被相続人を扶養する義務があります(民法第752条、第877条第1項)から、当然に世話をしたから寄与分が認められるわけではなく、この扶養義務で期待される介護の程度を越えていないといけません。
この程度の判断は被相続人の生前の状態にもよるため、個別具体的な判断が必要とされるのですが、大きな要素としては下記のようなものが挙げられます。
- ある程度介護に専念しており、また一定期間の継続した事実
- 客観的にみて介護に専念する必要性(被相続人の身体的状況など)
- 無償で介護した事実
このような事実が必要とされます。
介護による寄与分を証明する証拠
そして、これらの事実を証明するためにはその疎明資料が必要です。
一般的には、
- 医師の診断書
- 要介護認定の書類
- 介護サービスを利用していた場合にはその契約書、領収書など
- 日々の被相続人の様子や介護の記録
などとなります。
寄与分を主張する手続
寄与分は、まずは相続人の協議で決定できればそれによります。
ですが、協議が調わないときは、調停で話し合い、
調停でも合意できない場合は、家庭裁判所の審判により決定されます。
家庭裁判所が寄与分の審判をする場合には、遺産分割とは別に寄与分を定める処分の申立てが必要です。
つまり、寄与分を定める処分の申立てがないまま、家庭裁判所が寄与分の審判をすることはできません。
相続人でない人も寄与分を主張したい――特別寄与料制度
近時の民法改正により、特別寄与料制度(民法1050条)ができました。
特別寄与料制度とは、相続人ではない親族が被相続人の療養監護に勤めるなどの貢献を行った場合に、貢献に応じた額の金銭(特別寄与料)を請求できるというものです。
たとえば夫がその父よりも先に亡くなり、その後に夫の父が亡くなった場合、妻はこれまで夫の父をどれほど介護していても、代襲相続人ではないため、遺産の分配を受けることができませんでした。
しかし、民法改正により、相続人に対し、特別寄与料を請求できるようになったのです。
特別寄与料を請求する方法ですが、まずは協議、協議が調わないときは、調停または審判によることになります。
おわりに
本記事では、介護による「寄与分」について解説しました。
相続人間に不公平がある場合には「当然そうするべきだよ」と言ってもらえる関係が望ましいですし、その関係性を築くことが理想ですが、財産を前にすると必ずしもそうはいかないケースが多いのも事実です。
寄与分を主張する場合には、認めてもらうための主張方法やその寄与分の額について難しい面がありますので、弁護士に相談されることをおすすめします。
最終更新日 2024年9月15日
最終更新日 2024年9月15日