遺言書を勝手に開封してはいけない理由と正しい開封手順
最終更新日 2024年9月15日
封がしてある遺言書を発見した場合、中に何が書いてあるのか、自分はどれだけの遺産がもらえるのか、といったことはとても知りたいことと思います。
しかし、勝手に開けてしまうと法律によりペナルティが課せられるので開けてはいけません。
今回は、このような遺言書を発見した場合にとるべき、正しい手続きについて解説します。
遺言書を勝手に開封してはいけない
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません(民法第1005条)。
遺言書を勝手に開封してはいけない理由は、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は原本が開封していない遺言書しかなく、偽造や変造などを防ぐために開封についての規定が設けられているためです(ただし、法務局による自筆証書遺言保管制度を利用した場合を除きます。)
遺言書を開封してしまった場合
こちらでは、遺言書を開封してしまった場合はどうなるのかをご説明します。
5万円以下の過料
封印のある遺言書を家庭裁判所外において開封すると、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。
過料とは、行政上の義務違反に対するペナルティを意味し、刑事罰とは異なります。
過料の通知は管轄の地方裁判所から通知がきます。
ただ、違反すれば必ず過料に課せられるというわけではありません。
また、遺言書開封のペナルティは、5万円以下と規定されているため、さほど高額ではありません。
しかし、他の相続人から偽造や変造などを疑われる原因ともなりかねないため、法律で定められている以上は違反しないように注意しなければなりません。
そのため、後述する正しい方法で開封するようにしましょう。
開封した遺言書でも無効にはならない
封印した遺言書を家庭裁判所外で開封しても、遺言書の無効になるわけではありません。
ただ、自分に都合が良いように書き換えたり、自分に不利な内容だった場合に破棄したり、隠したりした場合には、相続人の資格を失うことになります(民法第891条4号)
遺言書の種類と正しい開封手順
遺言書の開封手続きとして民法では「検認手続き」を経るように規定されています(民法第1004条)。
検認手続きとは、遺言書の保管者または遺言書の発見者が家庭裁判所に請求し、相続人の立ち会いのもと現状を保存する目的で行われます。
検認手続きを行う場所
検認手続きは家庭裁判所で行われ、その目的は遺言書の内容自体の有効無効を審査するものではありません。
開封後の状態を保存しておくことにより、その後の偽造などがあったとしても判別ができるようにすることを目的としています。
そのため、検認手続きを受けたとしても記載方法が民法に違反していたり、内容自体に不備があったりする場合には遺言書が無効になることがあります。
検認手続きの手順
こちらでは、検認手続きの手順を詳しくご紹介します。
1. 書類を用意する
まず、用意する書類は下記の通りです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本すべて
- 相続人全員の戸籍謄本
- 申立書(裁判所のホームページからダウンロードできます)
なお、相続人が被相続人より先に死亡しており代襲相続が起きている場合や、被相続人の死亡後にさらに相続人が死亡して数次相続が起きている場合などは、その死亡した相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。
2. 管轄裁判所に申立てを行う
上記の書類が用意できたら、管轄裁判所に申し立てをします。
申し立ては郵送でも持参でもどちらでもかまいません。
管轄裁判所とは「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」を指します。
申立書には収入印紙800円を貼り、裁判所が指定した郵便切手を同封します。
申し立て後に家庭裁判所で書類を審査し、不備がなければ検認手続きの日時を各相続人に郵送で通知します。
この際に申立て時に同封した郵便切手が使われます。
3. 遺言書の開封
日時の通知を受けた相続人が家庭裁判所に集まり、出席した相続人立ち会いのもとで遺言書が開封されます。
裁判所で遺言書の中身を確認して検認を完了します。
その後「検認済証明書」の発行申請(収入印紙150円必要)をすると、遺言書に家庭裁判所の証明書が付けられます。
この段階まで進むと、不動産登記申請や銀行手続きなどの提出に適した状態となります。
検認手続きがされていない遺言書では、各機関の相続手続きを行うことができません。
また、検認手続きに欠席した相続人には後日家庭裁判所から検認手続きが完了した旨の通知が届くことになります。
遺言書を勝手に開封されないための対策
遺言書は、銀行の貸金庫などにしまっておくといった、簡単に修正や破棄ができないように工夫をすることで相続人間のトラブルを防ぐことかできます。
また、公正証書遺言は原本か公証人役場に保管されるためそもそも偽造変造や隠匿、破棄が問題にならず、検認手続きも必要ありません。
自筆証書遺言であっても、法務局による「自筆証書遺言保管制度」を利用することにより開封が問題にならず検認手続きも必要なくなります。
おわりに
今回は、遺言書の開封について確認しました。
遺言書は、被相続人の最期の意志を遺産承継に反映させるためのものであるため、紛失や偽造変造などの不安定な要素を残さないようにしましょう。
また、自筆証書遺言や秘密証書遺言は法律的な有効無効、遺言者の遺言書作成時の意思能力を担保できないため、相続開始後に紛争になることもあります。
そういったリスクを考えると、公正証書遺言を作成しておくのがもっとも確実な方法といえます。
遺言作成を検討されている場合は、一度専門家にご相談ください。
最終更新日 2024年9月15日