ご相談
Xさん(60代、男性、無職)は、母が死亡後しばらくたって、兄Y(60代、男性、無職)から、母の財産の大部分を取得するとの遺産分割案を示されました。
Xさんは、もともと、長男であるYが多めに相続することは容認するつもりでしたが、Yの分割案があまりに不公平であることから、不信感を抱き、母の預貯金の取引履歴を調査したところ、母の生前に、Yが多額の預貯金を繰り返し引き出していることがわかりました。
とはいえ、Xさんは、Yの態度から、ご自身での交渉は困難と考え、当事務所に相談しました。
当事務所の活動
当事務所は、すぐに受任し、Yに対し、使途不明金を指摘し、その使途を回答するよう求めました。
すると、Yから、詳細な返事があり、使途不明金について、(1)一部は生前贈与を受け、(2)一部は母のために使い、(3)残りは将来のために保管している、とのことでした。
そこで、当事務所は、(1)は特別受益、(3)は遺産であることを指摘し、これを前提とする分割案を提示しました。
しかし、Yから、上記分割案には応じられない、弟の真意とは思えない、などと回答がありました。
そこで、当事務所は、やむをえず、Yを相手方として遺産分割調停を申し立てました。
Yは、当初、弁護士は付けたくない、田植えがあるなどとして、のらりくらり対応しましたが、途中で、ようやく弁護士を付け、前言を翻し、(1)の生前贈与はYではなくYの妻に対してのものであった、そして、そのお金は使ってしまった、などと述べるに至りました。
活動の結果
ただ、家事調停は、民事訴訟と異なり、当事者が前言を翻してもペナルティがありません。
また、Yの妻への現金による生前贈与については、これ以上確認のしようがありません。
そこで、当事務所は、Xさんに十分説明のうえ、了解を得て、(1)を除外して遺産分割調停を成立させました。
Xさんは、高値で売却可能な不動産と相当額の金銭を取得して、遺産分割を完了することができ、ほっとした様子でした。
本件は、人との接触を控える時期でしたが、初回相談から終了打合せまで、ただの1度もXさんと面談することなく、テレビ会議にて報告、連絡、相談を行い、事件を解決することができました。
解決のポイント
遺産相続においては、民法上の均分相続の建前と異なり、後継ぎである長男が遺産の全部または大部分を取得しようとすることが多いようです。
ですが、他のきょうだいがこれに応じてしまうと、本来の相続分を取得できなくなり、ご自身やその子孫の今後の生活に悪影響が及ぶおそれがあります。
とはいえ、後継ぎである長男と直接話をしようとしても、居丈高にふるまわれるなど、話にならないことが多いものです。
この点、弁護士に依頼することで、長男に対し、言いにくいことも言うことができ、きちんとした相続を実現することが期待できます。
最終更新日 2022年6月8日
最終更新日 2022年6月8日